44人が本棚に入れています
本棚に追加
映画ストー㉓江藤伍長発見
果てしなく真っ白な雪原。ほかに何も見当たらないまま、続く大峠より賽の河原へ向かう隊列。
五人の嚮導ら案内されながら第五連隊の救助隊隊六十人。
先頭の嚮導が立ち止る。
何かを指さす。
隊長の三上少尉(モデルは実在の三神少尉、森田健作)がハッとする。
雪の中から石地蔵のようなものが見える。
三上が近寄る。
胸まで雪に埋もれた氷の像のような江藤伍長。
三上があわてて軍医を呼ぶ。江藤を救出して毛布の上に寝かせる。
軍医や看護卒によって手当てが行われ、江藤伍長の顔に赤みが出てくる。
「中隊長殿。中隊長殿」
江藤のかすれた声。三上があわてて声をかける。
「神田大尉殿がどうしたのだ」
江藤は何かを話そうとするが、口がかすかに動くだけ。三上は江藤の耳に口を寄せる。
「教えてくれ。山田少佐殿は、雪中行軍隊はどこにいるのだ」
三上の悲痛な叫びが、雪原に響き渡る。あまりにも悲しい光景だ。
三上の命令下、花田伍長(伊藤敏孝)が全速力で小峠、田茂木野村と全速力で駆け抜け、息絶えだけえとなりながら青森第五連隊の衛門にたどりつく。
連隊長の津村(小林桂樹)や木宮少佐(神山繁)ら第五連隊首脳は、花田より報告を受ける。
「……江藤伍長の報告によりますと、雪中行軍隊は山田大隊長、神田中隊長以下全滅の模様……引き続き、付近を捜索中であります」
その場で呆然自失となる津村連隊長、木宮少佐。
遭難は、直ちに第五連隊を管轄する第八師団、第四旅団にも報告され、ここに第八師団は全軍を挙げて救援に向かうことを決定した。
第三十一連隊雪中行軍隊は、いまだ連絡がつかないままである。
最悪、ふたつの雪中行軍隊が全滅という未曽有の事態が予想される中、第八師団の中林大佐、第四旅団の友田少将の表情には焦りの色が濃くなっていた。
果たして徳島大尉率いる三十一連隊雪中行軍隊はどうなっていたのだろうか?
※青春スター、森田健作の登場である。すでに青春スターとしての全盛期は過ぎていたものの、当時の若者たちにとっては一番身近な俳優である。
ただこの人は一生懸命演っているのだが、青春物以外は全て空回りしている感が否めない。何を演っても、まるで金太郎飴のように「森田健作」でしかないのが惜しい。この作品が好例である。
花田伍長役の伊藤敏孝は子役出身で、本格的に俳優の道へ進んだが大成できなかった。
木宮少佐役の神山繁は、昭和の人気ドラマ『ザ・ガードマン』のレギュラー、榊隊員役で知られていた。「雲」から「円」と新劇俳優として活躍。舞台の主役では、『マクベス』などがある。
映画やドラマでもたいてい嫌味な官僚や冷酷な幹部などホワイトカラーの悪役が多かったのだが、『ザ・ガードマン』ではそれを逆手にとって、二枚目を気取っているが、どこかコミカルな警備会社「東京パトロール」の榊隊員を好演して人気を集めた。
最初のコメントを投稿しよう!