春、入学式

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春、入学式

入学式があった。 宇佐見春人(うさみはると)、16歳。 今日から高校生だ。 と言っても、俺は、春休みからサッカー部の寮に入って、部活にも参加している。 寮で同じ部屋臼井素直(うすいすなお)は、初めて会った時にやたら俺の容姿を褒めてくれた。 目が大きくてタレ目なのが、実家の子犬にそっくりらしい。あと、下を向いた時に見えるまつ毛が、すごく長くて綺麗だと言っていた。 さて、そんな俺、宇佐見春人だが、残念ながら、入学式には参加できなかった。 式に出る前に生徒指導に連行されたのだ。 服装とか髪型とが、とにかく全体的に校則違反だったらしい。 髪は金髪、両耳にはピアス、学ランの下にはピンクのTシャツを着ていた。 生徒指導部でソッコー黒染めされて、今は地毛より真っ黒だ。あんなにキレなくても…。別に俺は、言われたら分かる男なんだけどな。今までは、あんまりちゃんと注意されたことがなかっただけだ。 寮に帰ってから、スナ…同室の臼井素直のことだ。スナに「生徒指導めっちゃ怖かったー」と言ったら、クスクス笑っていた。 スナは、大人しい感じだけど、いつもニコニコしていて良い奴だ。 今日は、入学式に出てもいないのに疲れた。 明日から学校生活が始まるし、一応少し緊張する。
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