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視力10.0の男
人物
朝倉 萌絵(19)大学生
関 紗季(18)大学生.萌絵の友達
視力10.0の男( ? )謎の男
女( ? )視力10.0の男の知人
怪しい男
〇マンション10階.萌絵の家.一室
ベッドの上で朝倉萌絵(19)がスマホをいじっている。
窓の向こう50mほど先のマンションで、スーツ姿の視力10.0の男
(?)が、同じくスーツ姿の女(?)にビンタされているのを目撃する。
萌絵「わっ! ウケる」
萌絵、ケタケタ笑う。以降、LIME(LINE風のメッセージ
アプリ)のやりとり。
萌絵の声「今、目の前で事件発生!」
紗季の声「なに?」
萌絵の声「男が女にビンタされてる笑」
紗季の声「え? テレビ?」
萌絵の声「違う! 窓から見えたんだって!遠くのマンション笑」
萌絵の声「あの男、絶対フラれたわ笑 あ!
紗季の声「どした?」
萌絵の声「今度は、逃げようとした女にしがみついてる。こりゃダメだわ。
キモい笑」
視力10.0の男から、女が逃げていく。
萌絵の声「ばくわら笑笑笑」
紗季の声「どうなったの⁉」
萌絵の声「女の人逃げた笑」
萌絵の声「めっちゃウケる」
萌絵がケタケタ笑いながら、そこまで打ち込んだところで、
視力10.0の男は、おもむろに右腕を水平に伸ばし、
萌絵のマンションの方を指さす。
萌絵「え⁉」
(以降、LIMEのやりとり)
紗季の声「萌絵、どうしたよ? ちょっと」
萌絵の視線がスマホ画面に移って、また遠くのマンションに戻ると、
視力10.0の男の姿は消えている。
萌絵の声「気のせいだと思うけど」
紗季の声「うん」
萌絵の声「なんか、男が私を指さしたように見えた」
紗季の声「え? さっきの男が?」
萌絵の声「うん。でもたまたまだよね」
紗季の声「でしょ。遠いんだから」
萌絵「気のせい……だよねえ。ああ、気持ち悪い。そうだ!
プロフ画像変えるんだった」
窓に背を向けて、LIMEのプロフィル画像を変更する萌絵。
(以降、LIMEのやりとり)
萌絵の声「画像変えちゃった~」
紗季の声「あーこれこの前の旅行の?」
すると紗季と萌絵のLIMEグループに突然、謎のアカウント
「視力10.0」が入ってくる。
萌絵の声「え何」
紗季の声「誰?」
視力10.0の声「俺、さっきお前を指差したけど見えたよね?」
萌絵の声「え」
紗季の声「何それ」
萌絵の声「あんた誰? てか、なんでグループ入れたのよ」
視力10.0の声「さっき、お前プロフィール画面見てただろう。
その時に色々見えた」
萌絵の声「うそ」
視力10.0の声「嘘じゃない。さっきお前が窓に背を向けた時」
萌絵、ハッとする。
〇回想.マンション10階.萌絵の家.一室
窓に背を向けて、スマホを触る萌絵。
〇マンション10階.萌絵の家.一室
スマホ片手に顔面蒼白の萌絵。
(以降、LIMEのやりとり)
紗季の声「萌絵、本当?」
萌絵の声「うん」
視力10.0の声「俺、視力10.0だから、お前の家のこと
全部見えちゃうんだ。例えば、お前のカーテンは、ダックスフンドを
連れた女の子の柄」
〇紗季のマンション3階.紗季の家
紗季、慄いた様子で萌絵にLIME通話をかける。萌絵が出る。
紗季「萌絵?」
萌絵「うん……」
紗季「カーテンの柄、当たってるよね……」
萌絵「うん……、当たってる」
紗季「家の近くに不審者いないか見てみ」
萌絵、窓から地上を覗く。すると、スマホを持った怪しい男
の後ろ姿が。
萌絵「スマホもった怪しい男がいる」
紗季「カーテン閉めて!」
萌絵「わかった」
萌絵、カーテンを1センチだけ開けて、スマホの男を覗く。
(以降、LIMEのやりとり)
視力10.0の声「カーテンを少しだけ開けて、外を見ているな?」
萌絵、そのメッセージを見て、慌てて怪しい男を見る。
すると、うしろを向いたまま。
(以降、LIME通話)
紗季「こいつの言ってること本当なの⁉」
萌絵「……」
紗季「どうなってるの?」
萌絵「(遮るように)本当」
(以降、LIMEのやりとり)
視力10.0の声「今そっちに向かっている
紗季、涙目になって、
紗季「え……何これ……気持ち悪い」
(以降、LIMEのやりとり)
視力10.0の声「あと30メートル」
紗季、驚いた顔をして、
紗季「え?」
(以降、LIMEのやりとり)
視力10.0の声「あと20メートル」
紗季、顔をしかめて、
紗季「やだ……」
(以降、LIMEのやりとり)
視力10.0の声「あと10メートル」
(以降、LIME通話)
紗季「萌絵、絶対、玄関開けちゃダメだよ!
萌絵「分かった……」
萌絵、そこでLIME通話を切ってしまう。
(以降、LIMEのやりとり)
紗季の声「萌絵、なんで切ったの⁉ 大丈夫」
〇街中.裏路地
スマホ片手に走る萌絵。
〇紗季のマンション3階.紗季の家
泣きそうな顔でスマホをいじる紗季。
(以降、LIMEのやりとり)
紗季の声「萌絵、大丈夫⁉ 家にいる?」
萌絵の声「うん」
視力10.0の声「萌絵ちゃん、ダメだよ。嘘ついちゃ。家から
逃げ出したでしょ」
萌絵の声「なんで分かるの⁉」
紗季の声「萌絵、本当なの⁉」
視力10.0の声「萌絵ちゃん、そんなに走って大丈夫?」
紗季の声「なにこいつ……ストーカー!」
視力10.0の声「ストーカー? はじめに俺を覗いて好き勝手
言っていたのは萌絵ちんだよね? どっちがストーカーかな?
まあおあいこかな?」
紗季の声「萌絵! 逃げて!」
萌絵の声「もう、大丈夫! 交番駆け込んだから!」
紗季の声「良かった」
視力10.0の声「また嘘。ダメだよ嘘は。人の家の井戸に隠れている
くせに」
〇街中.人家の庭先.蓋をした井戸の中
萌絵、暗闇の中、スマホの光を顔に受けて、顔面蒼白、ふるえている。
(以降、LIMEのやりとり)
紗季の声「本当なの⁉ 萌絵……⁉ 萌絵、返事して!」
〇紗季のマンション3階.紗季の家
スマホを両手でつかみながら、震えだす紗季。誤タップを
頻繁にしながら、萌絵にLIME通話をかけまくる。
(以降、LIMEのやりとり)
視力10.0の声「あれ、萌絵ちゃん。スマホの音をサイレントに
してるんだ? お利口さんだね。井戸の中から着信音が聞こえ
たら、かくれんぼ台無しだからね」
そのメッセージを見て、固まる紗季。
(以降、LIMEのやりとり)
萌絵の声「なんで分かったの? 井戸の中なのに」
視力10.0の声「種明かし。俺、視力だけじゃなく耳も相当いいんだ。
だから、萌絵ちゃんがスマホをタップする摩擦音が良く聞こえるよ。
萌絵ちゃんの摩擦音、どこ行てもすぐに分かる。だって、すっごく
特徴的なんだもん」
メッセージを見ながら、紗季、顔を横に振って、
紗季「なにこいつ……そんな訳ない……。摩擦音なんて……聞こえる
訳ない……!」
(以降、LIMEのやりとり)
紗季の声「萌絵! 萌絵! 返事して!」
視力10.0の声「紗季ちゃんも気を付けてね。人のことを覗き見て、
簡単に笑っちゃいけないよ。俺が指さした時、萌絵ちゃんの笑い声も
良く聞こえてきたから」
〇街中.人家の庭先.井戸の外
スーツ姿の視力10.0の男、手に持たスマホをポケットに
しまいこむ。視力10.0の男は、井戸に近づき、その蓋を
開ける。
おわり
《プロット版》
.マンション10階から外を覗きながら、ラインをやっている萌絵。紗季とグループチャット。窓の向こう、50メートルほど先に、男が女にびんたされているのを見てしまう。女が去ってく様子をラインで実況中継。
女にしがみついてる男を見て、笑いながら、
逆に嫌われるじゃん~こんなことして、分かってないな~とか好きなこと言ってる。とうとう女に完全に逃げられた男を見て、萌絵は、ばくわらと書き込む。何が?と言うと、とうとう女逃げちゃ、とまで打ち込んだら、男が右腕を水平に伸ばし萌絵の方を指さしている。
.一瞬、とまどう萌絵。でも、もう一度、視線を戻すと、男の姿は消えていた。あっちから見えるわけないしね。とやりとり。そして、そうだ。プロフィール画像変えんの忘れてた、と言って窓に背を向けて、スマホをいじる。
.紗季からメッセで、男どうなった?と言うから、もう一度見ると、居なくなっている。気のせいだったと言うと、突然、謎の男「視力10.0」がグループに入り込んでくる。
.とまどう二人に、男は、「俺、さっきお前に指差したけど見えたよね?」萌絵、驚いて何故、グループIDが分かったか問うと、さっき、お前のIDを見たという。嘘だと問い詰めると、お前窓に背を向けただろう。と聞いてくる。紗季は、本当に向けたのか?と聞くと、うん。と答える。
.俺視力10.0だから、お前の家のこと全部見えちゃうんだ。と言ってくる。例えば、お前のカーテンの柄は、ダックスフンドを連れた女の子の柄だ。家に遊びに行ってる紗季は当たってると驚く。紗季からLINE電話。
.近くに不審者がいないか見るように言われた萌絵は、マンションの下にスマホを持った怪しい男がいるのを見つける。家のカーテンを閉めるように指示される。でも怖いから、1センチほど開けて外を見ていたら、アカウント視力10.0の男からそれを指摘される。しかし、地上にいる男は後ろを向いたままだ。
.本当なのかと問う紗季に対して、答えない萌絵。どうなってるの?と紗季は聞くと、本当と一言。
.すると、男は、今そっちに向かっている。とメッセージ。何それ。気持ち悪い。二人。あと30メートル。あと20メートル。あと10メートルと言われて、絶対、玄関開けちゃだめだよ!と紗季が言うと、分かったと萌絵。
.けれど、萌絵は実は逃げ出していた。家にいるのかと問われて、紗季にいると嘘を答える。すると男は、家から逃げ出したねとメッセージ。
.萌絵、本当なの?と問うと、答えない萌絵。萌絵は、必死に逃げいる。なんでわかるの!?と独り言。走って逃げる。
.そんなに走って大丈夫?と男がメッセージ。
紗季が名にこいつ、ストーカーじゃん! とメッセージ。
.ストーカー? はじめに僕を覗いて好きに言っていたのは萌絵ちゃんだよね? どっちがストーカーかな? まあおあいこかな? と気持ち悪いメッセージ。
.萌絵が、もう大丈夫!交番駆け込んだから!とメッセージを書き込んでくる。良かった~と紗季。すると男が「嘘をついちゃいけないよ」とメッセージ。「他人の家の井戸に隠れているくせに」と言う。
.本当なのか?と問う萌絵に、返事のない紗季。line電話をかけまくるけど出ない萌絵。着信音をサイレントにしてるんだ?お利口さんだね。井戸の中から着信音聞こえたら台無しだからね……と男。
.萌絵がようやく、なんで分かったの? と一言投稿すると、男は「俺、視力だけじゃなくて、耳も相当いいんだ。お前がスマホをタップする摩擦音、すっごく特徴的なんだもん。どこ行ってもすぐに分かるよ」
.紗季は、「なにこいつ……そんな訳ない」と萌絵に何度も問いかけるけれど、萌絵からは一切返事がなかった。
.紗季ちゃんも気を付けてね。「人のことを覗き見て、簡単に笑っちゃいけないよ。萌絵ちゃんの笑い声も良く聞こえてきたから」と一言。
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