(東京編)プロローグ

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「猫は専門外だ。知り合いの獣医に診せるしかないな。問題は君だ・・・」 彼は私のマスクに手を伸ばす。 「その口許の痣酷いな…」 私は彼をやんわりと振り払い、背を向ける。 「大丈夫です・・・」 「いいから、来るんだ!」 と強い口調で言って、私に抱っこしていた仔猫を渡す。 ミャーミャーと甘えるように啼く仔猫を受け取った。 「君のジャンパーの中に仔猫を隠せ」 「あ、はい・・・」 私は彼に言われるまま仔猫をジャンパーに隠した。 「広瀬莉子(ヒロセリコ)さん…この痣は恋人に殴られたのか?」 「いえ・・・柱に顔をぶつけました…」 腕利きのドクター相手に見え過ぎた嘘の言い訳をした。
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