(東京編)プロローグ

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サラサラした黒髪は清潔な短めのツーブロックスタイルに仕上げられていた。黒のアンダーリムタイプの眼鏡越しに見える切れ長の双眼はココア色で、知的な光を宿していた。 鼻筋も通り、唇も程よい肉厚の形の良い唇。 白衣の下に着ている白いシャツにネイビー系のストライプ柄のネクタイ、ズボンはグレーのスラックス。長身の彼には白衣がとても似合っていた。 何よりも彼の品の良さに驚いた。 さすがは名家・伊集院家の御曹司。 「少ししみるけど…我慢してくれ」 彼はそう言って、消毒液を滲み込ませた脱脂綿で消毒した。 彼の言った通り傷口に消毒液がしみた。 「傷は口許だけか?」 「いえ、あ・・・」 作業服では見えないけど、カラダの至る場所に彼に殴られ、蹴られて出来た痣があった。 「見せて」 「いえ…大丈夫です…ありがとう御座いました…」 私は手短に礼を言って、逃げるようにカーテンを開けて、処置室を出て行った。
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