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これは、僕の身に降りかかった出来事の、記録である。
明治も文明開化が進み、すっかりザンギリ頭が定着してきた頃、僕は生まれた。貧乏ではなかったが、裕福と言う訳でもない僕の家柄だったが、有り難いことに、僕は大学まで卒業させて貰った。
大学在籍中に、僕は幼馴染みで親友の里見透と共に一冊の雑誌を作った。その雑誌には、僕と里見の短編小説を載せていたのだった。
そう。
僕は書き物をすることが好きだったのだ。
大学を卒業後、僕は学校で英語の講師として働きながら、細々と物書きも続けていたのだった。
そんな時だった。
僕と里見が世に出していた小説雑誌が、少しずつ注目され始めたのだ。そして、僕の小説を読んでくれた出版社の方が、少しではあったが僕に書き物の仕事を回してくれるようになった。
僕に書き物の仕事が来るようになってからしばらく後に、僕は里見と飲みに出かけた。
酒をたらふく飲んだ里見は千鳥足の中、帰りの道中で愚痴をこぼし始めた。
「いいよなぁ、お前は」
「何だよ、藪から棒に」
足を止めてしまった里見に合わせて、僕も足を止める。
「お前にあって、俺にないものって、何なのだ?」
「だから、突然何の話をしているのだ? 里見」
「小説だよ! 小説!」
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