14人が本棚に入れています
本棚に追加
「うっ、そっ…それは、むうぅ」
視線をあちこちに這わせて困ったふうを装う恋人に、橋本は大きなため息をついてみせた。
「まったく! 勝利の余韻やら、いきなりの口撃におまえが感じただけだろ」
宮本の下半身から躰を起こし、自分の席に戻った橋本が助け舟を出す。するとお返しをしてやろうと考えたのか、宮本は嬉々として助手席ごと橋本に抱きついた。
「雅輝、ストップだ!」
「え~っ、ここからがいいところなのに」
「どこがいいところなんだ。おまえはこんなところで、ナニをしようとしてる?」
「ナニって、陽さんを気持ちよくさせようと思ったんだけど」
「そんなことをここでしたら、おまえの大事なところをへし折るからな!」
空中でなにかを折る仕草をした橋本の顔は、街灯の灯りを受けているせいか、二割増しに恐ろしく宮本の目に映った。慌てふためきながら運転席に戻る。
「俺を抱きたかったら、とっととインプを発進させればいいだけだろ」
「確かに! ベッドで美味しくいただきますからね!!」
腕を組みながら正論を言った橋本の言葉に、宮本は瞳を輝かせながらアクセルを勢いよく踏み込んだ。ちなみに下半身は露出したままである。
橋本をベッドで抱くために、自宅に向かって急ぐ宮本の真面目な顔と、下半身丸出しのミスマッチな姿に橋本は笑いだしそうになったが、あえて指摘せずに助手席から眺めた。
どんな格好でも愛おしく思える宮本と一緒にいられることに、しっかりとした幸せを感じることができたのだった。
おしまい
最初のコメントを投稿しよう!