彼女の指は機関銃

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 ある日、上司から理不尽な叱責を受けた俺は、帰りにふらふらとスーパーへ寄った。  仕事は辛いものだと分かっていても、キツいものはキツい。食欲はないのでいつも通りにしいたけをビールで流し込もうと、しいたけレジJKの列に並んだ。  彼女はいつもフラットだ。レジに人が並んでも慌てる様子はないし、分からないことがあれば冷静にサービスカウンターの人を呼んでいる。  見た目から間違いなく女子高生だと思うのだが、その落ち着きが羨ましい。  ぼーっとしていると俺の順番になったのでカゴを渡す。彼女はちらりとこちらを見て、俺を認識した。  すると、しいたけレジJKは、しいたけをスキャンせずにテンキーを打ち始めた。  いつもなら、一度はスキャンしてみているのだ。今日はそれをしなかった。  どうせ読み取れないだろうと、諦めたのだ。白い指が躊躇いなくテンキーを打撃。  俺はそれを見て、決めた。  あ、転職しよう。  ♢  家から近い食品関連会社に転職した俺は、その先でしいたけレジJKに再会した。  俺はその会社のシステム部、彼女は経理部だ。  精算のために経理を訪れた俺は、懐かしい音に気付いて目を向けた。そこにはスーパーの制服ではなく、会社制服に身を包んだ彼女がいた。  彼女は、機関銃を撃つかのごとく電卓を叩いていた。  そして、冒頭に戻る。 「新人の須藤です」 「あ、俺は転職してきた田端です。よろしくお願いします」  彼女は予想通り、当時はJKだった。高卒で経理に入ったという。 「突然おかしなことを言ってごめんね。懐かしくなっちゃって」 「いつも私のレジに並んでくれてましたよね。覚えています」  他の経理部員が怪訝な顔で見てくる。  やめてほしい。だが言い訳もできない。 「お互い新人ということで頑張ろうね」  しいたけレジJKに適当に激励の言葉をかけると、俺はそそくさと経理部を後にした。
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