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『ねぇ、私を殺した日の事覚えてる?』 そう言った女は不敵な笑みを浮かべていた。おぼつかない足取りでフラフラとこちらに寄ってくる。 「ひっ......」 僕は金縛りにあったように逃げることも声を出すことも出来ずに、ただ硬直し、女がこちらへ来るのを待つしかなかった。冷や汗と震え。近づく足音。薄暗い部屋でもはっきりと見えるギラりと光る包丁。滴る赤い血。 僕は、長い黒髪に真っ白なワンピースを着たこの女の事を知らない。気がついたらこいつは僕の目の前にいて、僕へ包丁をかざしながら、私を殺した事を覚えている?としつこく尋問しながら近づいてきたのだ。 お前は誰だ?どこから僕の家に入ったんだ?僕を殺そうとしているのか? 女の目的が分からない。 少しずつ、たが着実に僕達の間の距離は縮まっていく。 殺される。殺される。殺される......。 女が僕の目の前に立った。刃が首に当たった。何かが滴り落ちる感覚。女の白いワンピースに返り血。僕は意識を手放す瞬間、女の長い髪の間から初めて女の青白い顔を見た。 「あ、お...お前は......」 僕はこれを最後に、暗い闇に引きずり込まれた。
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