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「隣、いいですか?」
「は、い、どうぞ……」
「ありがとうございます。初めまして、湯浅貴幸です。今日は暑いですね」
身長は雫より頭ひとつ半ほど高い。額の汗を手の甲で拭い、襟元のネクタイの結び目をすこし緩めながら、貴幸は雫の隣に座った。
厚みのある胸、白いシャツから伝わって来る微熱に、雫のうなじが火照る。
――――こんな人と恋ができたら……
男と男だ。
早々奇跡なんて無い。
それでも可能性はゼロではない。
(そう、実家の『商売』さえ知られなければ――――)
雫はきゅっと下唇を噛んだ。
坂月雫の『仕事』は、関東半分を牛耳る坂月組の組長だ。
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