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「……でも、お菓子の新商品開発なんて、面白そうですね」
雫の呟きに、貴幸は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「坂月さんは甘いものお好きですか?」
「好きです」
「俺もです」
目を丸くし、貴幸を見つめ返す。
「今は、秋の新商品開発で、和菓子テイストを、ちょっと入れてみたいなあと思っています」
「雫は和菓子作りが趣味だから、色々と聞いてみたらいい」
「し、失礼だよ、式島」
コンビニで大ヒットの菓子と素人の手作りの菓子を一緒にしてはいけないと狼狽え、雫の顔が強張った。
「え? すごいな。手作りの和菓子なんて」
「素人の作った物です」
照れ隠しで切るように放ってしまった冷たい声に、雫自身がショックを受け、唇を噛む。
(……どうして、自分はこうなんだ)
「雫の作る和菓子、特に和三盆糖の落雁は、仕事先にも大好評なんだよ」
「!」
そっちに盛ってくれるのかと、雫は式島に心の中で手を合わせた。
大好評は恥ずかしいが。
「和三盆糖って、砂糖の中でも上品な甘さですよね。手作りの落雁かあ。いいなあ、食べてみたい」
食べさせてあげたい。そのセクシーな唇に落雁をそっとあてて、溶けるところが見たい。
「雫さん」
「はい……え?」
(今、名前、呼ばれた?)
「俺も、雫さんと呼んでもいいですか?」
「は、……」
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