第一話 初めての食事会

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 弾む心とは裏腹に、断る理由なんてないし、と照れ隠しでつい、いいそうになった余計なひとことを、なんとかこらえた。 「雫さんは、どんなお仕事を?」 「えっ」  貴幸の直球の問いに、弾む心臓がぶすり、と刺される。 「ち、仲介……?」 「不動産ですか?」 「いえ、人です。仲人、かな」  人間関係を仲立ちする人。  シマ、組同士の抗争、芸能人同士のトラブル解決。 (ん? なんか違う?)  雫は首をひねった。 「仲人さんって、パートナーを紹介したり、結婚まで世話をしてくれる、あの、仲人さんですか?」  目を輝かせる貴幸に、違います、もめごとの火消し屋です、とはいえなくなってしまった。 「はい。祖父……ではなくて、祖母の代からの縁で」 「素敵ですね。お着物なのは、普段、仕事で着てらっしゃるからですか?」 「え? ま、まあ、そんなところです」  間違ってはいない。祖父から受け継いだ、組長の勝負服だ。 「じゃあ式島も? 前に幼馴染の雫さんと一緒に働いてるっていってたよな」 「!」  式島の方を見て、ごめん、上手くごまかして、と目配せをする。 「ああ。仲人の他に新婚旅行先のチケット手配や、縁のある格安ホテルの紹介とか、手広くやってる」  さらりと返す式島に、ほっとし、なるほど、と頷く。  芸能人のお忍び旅行のおぜん立てや、マスコミ対策ばっちりの宿の手配など、確かに色々やっている。そっちに寄せればよかったのか。 「じゃあ、雫さん、聞いていいですか? 都内の結婚式場で、どこかおすすめってありますか」 「けっこ、ん」  ガン、とショックを受けた。
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