1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
女子高生、ペンギンの母になる
雨上がりの放課後、ペンギンの赤ちゃんを拾った。
歩道の真ん中で、キイキイと高い声で鳴いているところを見つけたのだ。
動物園や水族館は近くにない。一体どこから来たのだろう。
しばらく眺めていたのだが、カラスの鳴き声が聞こえ、反射的にこの子を拾ってしまった。
ペンギンの赤ちゃんは、コンビニのおにぎりくらい小さく、ふわふわした灰色の毛に覆われている。頭は黒く、目の周りは白い。海苔でご飯を巻いたようで、本当におにぎりに似ていた。
ペンギンは魚を食べるのだろうけど、この子はまだ赤ちゃんだ。拾ったその日はスーパーで牛乳を買って帰った。ストローをスポイトのように使って牛乳を与えると、赤ちゃんは大きく口を開けて牛乳を飲み込む。
一生懸命に喉を鳴らす赤ちゃんを見ていると、愛しさが暴走しそうになる。自分が産んだような気がしてくるし、なぜか口に入れたくなる。これが母性というものだろうか。
そういうわけで、両親にも友達にも内緒で赤ちゃんペンギンを飼っている。名前は「ツナマヨ」だ。
女子高生の経済力で一人(一羽?)を養うのは確かに厳しい。でもお年玉は結構貯まっているから、当面の食費は大丈夫だと思う。欲がなさすぎて自動貯金になっているのだ。
牛乳を飲み終わると、ツナマヨは私の足の間に入りたがる。ペンギンの親が赤ちゃんを足で挟んで守るからだろう。
ベッドに腰かけて腿と腿の間に隙間をつくり、ツナマヨを入れる。ふわふわの毛が脚をくすぐった。体温もじんわりと伝わってくる。
手で頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。キイ、キイ、と鳴くのだが、次第にペースが遅くなっていく。くたりと腿に寄りかかり、うっとりと眠るツナマヨ。つられるように私も眠った。
最初のコメントを投稿しよう!