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「じゃあ、良かったら送って行こうか? またさっきみたいなことがあったら危ないし」
ルアがそう言うと、キランも声を弾ませて言った。
「あ、それいいね! 僕達こっちのことはよくわかんないけど、カイが一緒ならいろいろ案内してもらえそうだし!」
キランはすっかり乗り気みたいだけど、俺としてはあまり歓迎できない展開だった。
俺を助けてくれた恩人とはいえ、他人とずっと一緒にいるのは疲れる。
でもこのまま旅を続けたら、さっき以上に危ない目に遭うかも知れなかった。
俺はまだ子供だし、一人だし、ああいう連中からしたら、いいカモだろう。
さっきは本当に怖かったし、できればもうあんな思いはしたくなかった。
だけどキラン達だって、もしかしたら明日の朝には俺の貴重品を持って消えているかも知れない。
どうするのが正解なんだろう。
俺が答えを決めかねていると、ルアが俺の心を見透かしたように言った。
「僕達、お金になんて興味ないよ」
「べ、別に疑ってた訳じゃねえよ」
俺はルアから目を逸らしてそう言った。
目の前にいる相手に疑っていたことがバレるなんて、あまりにも気まずくて、咄嗟に嘘を吐いたけど、この気持ちさえルアには見透かされている気がする。
俺ってそんなに顔に出るタイプだっただろうか。
そんなことを考えていると、キランがジャグリングしていた小石を順にキャッチしながら言った。
「嘘吐いてもわかるよ。僕達には相手の気持ちや考えが読める力があるから」
そっちの方こそ嘘だろう。
そう思った途端、キランが手の平の中の小石を捨てながら言った。
「だから、嘘じゃないんだってば。その証拠にさっきからカイが思ってること、全部当ててるでしょ?」
確かにそうだ。
そうなんだけど、俺は超能力なんて信じない主義だから、どうしても納得行かなかった。
――じゃあ、これなら信じる?
いきなりキランの声が頭の中に聞こえて、俺はぎょっとした。
気のせいかなと思ったら、今度はルアの声が頭の中に響く。
――気のせいじゃないよ。僕達は自分の力と肉半分ずつでできているから、人間と違って半分だけ物に縛られない存在なんだ。だから人間よりも心の扱いが上手くて、考えや気持ちを読んだりできるし、こうやって心に直接話し掛けたりもできるんだよ。
二度も立て続けに頭の中に声が聞こえた以上、俺の気のせいって訳じゃないみたいだ。
でもいきなりこんなことを言われても、とても頭が付いて行かない。
見た目は人間に見えるけど、実は人間じゃない?
それならテレパシー能力があるのも納得だけど、かなり突拍子もない話だ。
でもルアはテントも知らなかった訳だし、人間じゃないという話にもある程度説得力があった。
あくまである程度は、だけど。
「あのさ、人間じゃねえってことは、つまり妖怪な訳?」
日本にいる人外の存在と言えば、やっぱり妖怪だろう。
漫画やライトノベルだと、妖怪どころか天使や悪魔が普通に日本にいたりするし、二人共和風とは程遠い顔立ちだから、正直全然妖怪っぽくはないけど。
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