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答えは?
突然の電話で呼び出され、高校の校舎裏で集まったのはある晴れた日の午後だった。
用務室からシャベルを借り、男二人が大樹の下の土を掘り起こし、周りには男女を含めた数十人が固唾を飲んで見守る。
あった!とシャベルを置き、取り出したお菓子の缶が地面に置かれ、ゆっくりと開いた蓋に懐かしいと高い声を上げながら、群がるいい大人になった女子達に10年前の光景が思い浮かぶ。
高校生活も終わりに近づいた頃、俺は一人の想い人に告白したのだが、帰ってきた言葉は、イエスでもノーでもなく、
『十年後のタイムカプセルに答えを書いたから』
だった。
わけもわからず、何度聞いてもそれ以上の言葉は返っては来ない。
二人で会う機会があっても、俺はその答えを聞けず、今日までこの時をずっと待っていた。
フェンスにもたれ、取り出したタバコに火を点け唇に挟むと煙を肺の中へと送り込み、立ち上がる煙をぼーっと見ていたところに、髪をアップした女性が近づいてきた。
差し出された物を受け取り、懐かしさに思わず苦笑いを浮かべる。
手の中には適当に入れたガラクタと、俺宛の四角い封筒。
まさかと慌ててガラクタをポケットに荒く収めると、封筒を開け中の紙を取り出した。
指の間に挟んだタバコの煙が風の流れと同じようにゆらゆら揺れ、その一瞬、周りの声が消え心臓が動く音だけが聞こえる。
緊張の面持ちで開いた紙に一言だけ書いていた文字に顔を上げ、送り主の相手を視線で探し、名前を呼んで振り向かせると、白い紙を掴み腕を上げた。
バツの悪そうな表情で頷いた相手に俺はひと目を気にせず、歓喜に叫ぶのであった。
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