【 初花月、散った花弁を掻き集める 】

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 式神は幽霊の括りから外れるし、当然人間には視えない。契約を結んでしまえば、祓い屋総本家の名前の書かれた看板を首からぶら下げているようなものだ。  人間であっても、怪異であっても。近付いた瞬間、返り討ちに遭うと直感で判る相手に対して、危険を犯してまで、わざわざ手を出そうとは思わない。 「私を殺した相手は或る意味、気の毒ですね。この世でもっとも敵に回してはならない相手を、こうして敵に回してしまったのですから」 「気の毒もクソもあるか。お前を殺したのが人間でも、きっとブチ殺すだろうよ」 「絵に描いたような復讐劇を、実際やってしまいそうなところが雨称らしいですね」 「俺は至って本気だけどな」 「……え」 「……あ?」 「いえ、気にしないでください。貴方が私を好きすぎると、再認識しただけですので」  なんてことを言いやがる。好きとか、愛してるとか。脳味噌の溶けそうな言葉を避けて、言葉を選んでいるというのに。どうして毎度毎度、直球な表現に変換しやがるのか。  丸めて投げて寄越された恥の塊はゴミ箱に突っ込みたいが、かといって本心なのは確かであるから否定することもできず、内心叫び散らかすしかできない。
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