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「にゃあ」
左之助の声。グルグル鳴らす喉。俺の顔に小さな頭を一生懸命に擦り付けてくる。目を開けると、朝だった。
大きな女はいない。でもパソコンだけが点いている。
部屋は朝日に満たされ、外を走るバイクの音が聞こえる。でも、胸の中はまだ恐怖と悲しみでいっぱいのまま。
枕はびちゃびちゃに濡れていた。
もう嫌だ……。どこにも行きたくない。
俺の体は小さく小さく縮んでいった。
携帯が鳴った。母親からだ。電話にでるなり「遅刻するよ!」と怒鳴られた。しかたなく体を起こし、ベッドから出た。
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