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奏多さんからの話?
「なんですか?」
彼の話が始まるまでに少し間があった。
改まってなんだろう。
「んー、なんて伝えようか悩んだけど。湊ならカッコいい言葉とか思いつくんだろうけど……」
「俺は、奏多だからやっぱり無理」
どういう意味なんだろう?
「花音のことが好きだ」
「えっ?」
夢……だよね?
そんなことあるわけがない。
「最初は認めたくなかった。というか、好きになっちゃダメだと思っていた。こんな仕事してるし」
「でも、お前が家にいないとすごく寂しい。たった一日いなかった日も、何も手につかなくなってた。今、何をしているんだろうとか?男といないか……とか。お前のことばかり考えてた。んで、机にお前の手帳が置いてあったから、お前の部屋に置きに行こうと思って、カレンダーを見て。すごく嬉しかった。CDもライブも俺に言えば簡単に手に入る物なのに、全然頼ろうとしないじゃん?それが、少し寂しかったのもあるし、花音らしいなって思って……。そうそう、カレンダーを見て、お前の誕生日を知ったんだ。言わないところもお前らしいと思ったけど……」
彼の瞳は真っ直ぐに私に向けられている。
「俺は、花音がいないとダメだ。ずっと俺の傍にいてほしい。この仕事をしているから、この間みたいに悲しい気持ちにさせることも、仕事でいない時もあるから寂しい気持ちにさせることもあるかもしれない。普通の男と女みたいに、気軽にどこかに行ったり、遊びに行ったり……することもできないと思う」
「でも、それ以上に幸せにする。約束する。ずっと俺の傍にいて?」
奏多さんが私のことを好き?
本当……なの?
私も奏多さんのことが好き。
だから、離れようとした。一緒にいることで、奏多さんの迷惑になると思ったから。
この先の彼のことを考えれば、奏多さんのことを本当に思うのであれば、一緒にいない方がいい。
彼はまだ歌い続けるから。
私がいたら、きっと邪魔になる。
もしも……。もしもこの関係が世の中に知られてしまったら、彼の人気は落ちてしまう。
彼の謎に包まれているビジュアルが好きなファンもいるだろうし。私もきっと、バッシングを受ける。
彼と付き合うということは、相当な覚悟が必要。
私にはその覚悟があるの?
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