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「それは……」
やはりもっと収入を増やすしかない。
「夜、働きます。夜の方が時給が良いので。もちろん、本屋さんのアルバイトは辞めません。終わったあと、掛け持ちをします」
私の話を聞いて、彼は頭を抱えた。
「バカだな」
バカだなって……。
最悪、そうするしかないことは薄々考えていた。
学校も急に教材を購入しなければならないという時があるし、遠征にだってこれから行く機会があるだろう。
さらにお金が必要になるとは思っていた。
「だって、それしかないじゃないですか?身体でも売れって言うんですか?」
ご飯を食べたからか、反抗する力が出てきたような気がする。
「お前が身体を売ったって、いくらにでもならないわ。キスも初めてだったくらいだろ?キスだけであんな激怒してたら、夜の世界なんてやってらんねーよ」
そう言えば、私、湊さんにキスされたんだ。
思い出したら、紅潮してしまった。
「お前、そこまでして夢を諦めないんだな?」
「はい」
自分が納得できるまで、自分が自分を認めてあげられることができるまで夢を追い続けたい。
歌が私を救ってくれたように、私も誰かを救いたい。
「わかった。それじゃあ、俺から一つ提案がある」
「なんですか?」
嫌な予感がした。
「お前、住み込みで俺の専属家政婦になれ。給料は出す。どうだ?」
「はいっ?」
この人は何を言っているのだろう。
「学校がある時は通学をする、成瀬書店のアルバイトはそのまま継続してもらう。アルバイトが終わったあとは、家政婦として働く。もちろん、朝から働いてもらう。俺の飯作り、掃除、洗濯。その他いろいろ思いついたら指示をする」
そんな生活だったら、今の生活を変えず、夜の仕事をした方がいいんじゃないかと一瞬思った。
「この部屋の空いている一室をお前の部屋にしていい。風呂とかも自由に使ってくれて構わない。家賃も光熱費も俺が負担する。どうだ?」
家賃と光熱費が減る、お風呂にも入れる、さらに家政婦の給料が増える。
心が揺らいだ。
「あぁ。あと、飯も心配しなくていい。必要な金は渡すから、俺とお前の二人分を準備してほしい。俺が仕事で、飯がいらない時は連絡するけど、お前は好きに冷蔵庫の物を使ってくれて構わない」
食費も無料!?
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