同居

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「わかりました。じゃあ、食後は必ずデザートつけるようにしますね」 「あぁ。頼む」  まだ少し笑ってしまいそうだったが、なんとか堪えた。 「今日は何か食べたいものありますか……?」 「うーん。そうだな。今日はプリンが食べたい」    プリンを買い物カゴの中にいれる彼。    その場を通り過ぎようとすると 「おい、お前の分は?」 「えっ?そんな贅沢はできませんよ。ご飯をいただけるだけで私は有難いので……」  彼は不満そうな顔をしている。 「プリン、嫌いなのか?」 「いや、嫌いじゃないですよ?甘い物、私も大好きですし……」  嘘ではなく、甘い物は好きだった。    湊さんは、違う種類のプリンをもう一つカゴの中に入れた。   「俺、こっちも食べてみたいから、お前の分一口食べさせて?」    追加で入れたプリンは、私の分らしい。 「はい、わかりました。ありがとうございます」  お会計を済まし、買った物をレジ袋に入れる。  当然のように買った荷物を持とうとしたが、それを彼がパッと取り上げ、持ってくれた。 「湊さん、荷物持たせてください!一応、家政婦ですし……」   「お前、一応、女の子だろ?荷物くらい持たせろ」  やっぱり、彼は優しい。  口は悪いけど。   「ありがとうございます」  私の前を歩く、彼の背中に伝える。  荷物を持っていない方の手をあげ、彼は返事をしてくれた。    彼のマンションに帰る。   「じゃあ、私、夕ご飯の準備をしますね」   「おう。俺、ちょっと寝室で休んでるからできたら起こして?」  そういえばここのところ、ずっと資料や譜面を彼は見ていた。成瀬書店に来ても、二階で何かずっと調べていたし。    彼は寝室に入っていった。    よしっ、美味しい物を食べて元気を出してもらおう。そして、私が料理ができないと思っている彼をびっくりさせてやる。  私はエプロンをつけて、キッチンに立った。    料理ができたので、寝室をノックする。   「湊さん、ご飯できましたよ?」  返事はなし、音もしない。 「入りますよー?」  声をかけながら、寝室に入る。    私が倒れた時に使わせてもらったベッドで、彼はうつぶせの状態で枕を抱えながら寝ていた。   「湊さん、起きてください。ご飯できましたよ?」  ポンポンと肩を叩く。  それにしてもこうやって静かに寝ていると綺麗だな。思わず、髪の毛に触れてしまった。 「ん……」 「湊さん、起きてください。夕ご飯できました」  もう一度、肩をポンポンと叩く。  この間の寝起きは最悪だったが、今日は大丈夫かな?  
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