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リーゼは我に返った。
「ごめんなさい、私えらそうに」
そうして赤い顔を両手で押さえる。
カインの手が髪を撫でる。
「自分の幸運が怖すぎて不安になる」
どちらからともなく微笑みを浮かべた。
「まだまだ知らないことがある。きっとお互いに」
だから時間をかけないといけない。二人で会話をして過ごす時間を作らないと。
セルジオからのメモを見て、まずは菓子を探す。匂いを頼りに曲がった路地に素朴な菓子店があった。
クッキーやマフィンが並んでいる。
「リーゼはどういったものが好きなんだ?」
「私はナッツとキャラメルの入ったものが好きだったんですけど、このお店クッキーの種類が多すぎて、初めて見る味がこんなに」
ドライフルーツやチョコがいろんな生地に混ざっていて、見るだけでもわくわくする。
全種類の入った詰め合わせを買う。
「そういえば、これは誰へ渡すのでしょうか。セルジオさんは最強のライバルって、」
「それは気にしなくていい。」
そう言われてもリーゼとしては気になる。
「あとはレターセットと、花と」
雑貨屋でレターセットを探した。
リーゼの目が一点に吸い寄せられる。
「リーゼ?これが気に入ったのか」
夜空の模様のレターセット。
「綺麗ですね」
「リーゼはこういうのを好むかと思っていた」
花柄やレースのものを指すと、
リーゼは笑った。
「そういうのも好きですが、この色ってカイさんの色だから」
「そ、それはどうも、です。
じゃあ、これでリーゼに、手紙を書いたら喜んでくれるか?」
「欲しいです」
バッサー。
買い物かごに入れて
店にあるだけ買った。
そのあと、手芸店でリーゼが刺繍の道具や糸を見たいと言ったので、寄った。目をキラキラさせて
「何かカイさんにも作って贈りたいです」
と言うので、
バッサー
と糸をつかんでかごに入れようとして
リーゼに止められた。
花屋でテーブルに置くような小さなブーケを2つ買った。
けっこう荷物が増えて、よく歩いた。
そろそろ影が伸びて夕焼け空。
指定された時刻に近づいている。
「リーゼ、手を。」
街の橋の近くで手を握られる。
「転移するから、つかまっていて。そんなに長い時間じゃないから。目をつむって」
ぐっと体を寄せて、
どこへ、という呟きは空に放たれた
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