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魔術師たちは集まっていた。そう、いつかのように。 「こんなはずじゃなかったんだ……」 「なんで……ハッピーエンドで終わるだろ、普通」 黒いローブ姿の魔術師たちは、円陣を組んでいた。以前のように皆で団結を強めようとした。 ただ、座っていた。 項垂れていた。 声も床に向けて力なく発しているので、活気はない。 「団長が無事に結婚できますように」 「団長が愛想をつかされませんように」 「団長が結婚生活になれるまで、この国がもちますように」 現在の団長であるカインは、かつて例がないほど魔力量が多い。細かなコントロールをして日常生活を平穏に送っている。 いや、送っていた。 恋というものは恐ろしいもので、本人も気付かないうちに魔力が駄々漏れになる。 歩く災害である。 20代で魔術師団長になるなど前代未聞だった。 生まれつきの魔力量の多さが決め手だった。 歩く伝説と呼ばれる彼は、常識など持ち合わせていない。学校で女子と机を並べたこともない。 恋愛方面には、子供同然だった。 そんな彼が、色々とあって(単に一目惚れなわけだが)リーゼロッテと婚約をした。 そこには魔術師たちの陰の努力がある。 色ボケした団長が結婚前にフラれでもしたら、この国が、地図から消えるかもしれない。 今の魔術結界は団長によって根底を支えられている。その精神力が不安定だなんて、万が一他国に知られるようなことがあれば 危機である。 魔術師たちの胃はストレスで限界を迎えようとしていた。
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