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王妃さま付きというのは侍女の最高峰ともいえる。 人格、教養、外国語、武術、毒の知識 全てを兼ね備えて、それを感じさせない。警戒心を隠せないようでは失格である。 メリッサさんの柔らかそうな雰囲気と芯の強さを感じる言動。 「セルジオさんはすごい方と結婚されたんですね」 「まあね、大変でしたよ。メリッサが仕事を辞めるとなったときは。」 ふふふ、と笑ってメリッサさんもセルジオさんの横に座りワインを飲む。 「メリッサはトップクラスの侍女で、私は魔術師団のなかでも目立たない存在でしたから。」 目立たない存在? 「セルジオが副団長になってから団員がまとまってくれて助かっている」 カインがリーゼに向けて言った。 「カインも含め魔術オタクしかいませんでしたからね。予算の請求や事務仕事や交渉が苦手なんですよ」 確かに、侍女の先輩たちも魔術師は地味だと言ってたし魔術師棟からめったに出てこない。 「結婚の時期はもう決めてるの?」 「なるべく早くと思っているんだが」 カインが即答した。 「私の仕事の引き継ぎが決まらなくて」 リーゼが小さい声でいった。 「そうねえ。王女様の結婚がタイミングとしてはいいでしょうけど。あ、籍を入れて仕事を続ければいいんじゃない?」 「そんなことできるんですか?」 「私もそうしたわよ。仕事の区切りなんて待ってたらいつになるかわからないもの。籍を入れたら式の準備もゆっくりできるし、何より興味のない誘いを断りやすくなるわよ」 リーゼにとって、そんな方法があったのかと悩みがほどけていくような気がした。 「実は、カイさんのことを誰かに取られてしまうんじゃないかって心配で、仕事中も前ほど集中できなくて」 カインが感激して抱きつこうとするのをメリッサが足を踏んづけた。 「それは不安にさせる男が悪いわね」 「結婚なんて、許さないんだからっ!」 ローズちゃんが、バンッと机を叩いた。 「カインはローズと結婚するの!」 「あらあらごめんなさいね、この子ったらカインのことが大好きで」 お土産の焼き菓子をもらって帰った。 疲れてるなら転移で王宮に戻れるけどどうする?と聞かれてリーゼは断った。 「もう少し、一緒にいたいです」 「それなら、ちょっと寄り道していこう。目を閉じて」 リーゼの体を包み込む。 (あ、カイさんの匂い) 目を開けると、一面の星空だった。 丘の上にいた。 「すごい」 「リーゼ、このまま聞いて」 後ろから抱き締められて、草の上に座っている。 「あまり会いに行けずにごめん。早く結婚しないとって仕事を焦ってた。不安にさせてごめん。これからも忙しい時もあると思うけど、本当に大事にするから」 ぎゅうっと力を込められる 「結婚してください」 「……はい。」 頬に口づけられる。 後ろを向くと、唇を重ねた。 何度も、顔中のあちこちに、軽くキスをされる。 「カイさん、もうっ、くすぐったいです」 「かわいい……かわいい」 「帰りましょうか」 「え、あ、うん」 手を繋いで、転移して城下町から 王宮まで歩いた。 まだ飲食店や酒場から灯りがあふれていて、少しの酔いが長く続くようないい夜だった。
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