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リーゼは仕事に向かう途中で、久しぶりに庭園の花を眺めた。季節が変わろうとしている。今まで心の余裕がなかったことに気づいた。
昨日セルジオさんのおかげでカイさんと過ごせたし、メリッサさんも優しかった。
理想の家庭を見せてもらった気がした。
あんな風に温かい家庭を作れるか自信はないけれど。
以前、セルジオさんから聞いたことがある。カインは魔力量が多すぎて両親に売られるように魔術師になったと。だから家庭を知らないことを本人も気にしているそうだ。
婚姻届は今週にでも出そうと決めた。魔術師は急な仕事の呼び出しも多い。婚約者と妻では知らされる情報も違うから早く籍は入れた方がいいとメリッサさんが教えてくれた。リーゼの両親も賛成してくれている。
朝礼で侍女長の横にたつ人を見て、言葉をなくした。
確かに昨夜、
「またね!王宮にもそのうち行くわね」
と微笑んでいたけれど。
翌朝に出会うとは思いませんでした。
メリッサさん。
しかも、教育係だなんて。
先輩侍女さん達もざわついてました。
カトリーヌさんも、
「あれが伝説のメリッサ様!後輩も育て、旦那も育て、子育てしながらも王妃様に復帰を請われているそうよ!あやかりたい」
「短い間ですが、皆さんのお仕事を拝見して気付いたことがあればお伝えしますね」
ふふ、と笑ったけれど、みんな震えあがった。この人、仕事できる人だとわかったから。
「リーゼさんをちょっと借りますね」
連れていかれたのは城の美容サロン。
「カインに寄ってくる虫を駆除しましょう。イメージチェンジしてみない?」
「イメージを?」
「少し大人っぽくしましょう。」
「お願いします」
メリッサさんが教えてくれた。廊下で絡まれた赤毛の人はサラという名前だそうだ。魔術師団の人には有名らしい。セルジオさんも声をかけられたそうだ。
前髪にハサミが入る。
大人っぽく見えるようにおでこを出していたんだけど、メリッサさんにおでこが丸くて幼く見えると、指摘された。
まとめ髪の位置を高くする。
少しキリッとアイラインを引いたら、子供っぽさが解消された気がした。
「まずは形から武装することも大切よ」
メリッサさんが、背中をポンポンと叩いた。
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