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一方。 憧れの魔術師団長の婚約者となった、リーゼロッテは雑務に追われていた。恋人期間を楽しむ暇もなく、忙殺の日々。 リーゼは第二王女付きだった。望んだからといって得られる立場ではない。可愛らしい容姿だけてはなく人柄と能力もかわれていた。 要領よく仕事を処理するタイプではないが、コツコツと誠実に仕事をこなして信頼を得ていた。 次の侍女がなかなか決まらなかったので引き継ぎも出来なかった。 「王女付きになれば良縁ヒャッホー!」ガツガツ私欲タイプと 「私は仕事に生きるわよ」プロフェッショナル侍女タイプの どちらからも憎まれない新人、後輩力の高さがリーゼの持ち味であった。 王女は突然の結婚に驚きながらも、 「あの人間嫌いの魔術師団長を溺愛キャラにするなんて流石リーゼ!」 と、物語のようだとうっとりとしながら祝福してくださった。 リーゼ自身も驚いている。 いきなり結婚だなんて。 それに、本当にカインがすごい人だと皆が言うのだ。 伝説上の英雄のように。 それは嬉しいことのはずなのに、胸の辺りが重くなる。 忙しすぎて、ろくに話もしていない。 大好きな人。 憧れてた人。 結婚、する人。 結婚するのになあ。前より、うんと遠い気がする。 リーゼは、空を見上げて深呼吸した。
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