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団長の執務室に行くまでに、顔見知りになった魔術師たちが挨拶をしてくれる。
団長室をノックすると、低い声で許可がもらえた。
お仕事モードのカイン団長だ!
とドキドキする。
フードを被っていて、姿がわからなくても格好いいって思ってた。
あの頃はこの人とどうにかなるなんて想像してなかった。
「失礼します」
そっと入ると、顔を上げたカインが蕩けるような笑顔を浮かべる。
「リーゼ、来てくれたのか」
「はい、メリッサさんが今日、私たちの指導に来てくださって」
「あー、セルジオがそんなことも言ってたな。それであいつはこんなに仕事を押し付けてメリッサと出掛けたのか」
「さっき、出会いました」
メリッサさんが助けてくれて。
そう、その前に出会いたくない人と出会った。
「あの、前にサラさんに……
喧嘩を売られたことがありまして」
「は?あいつ辺境にいるはずだろ?リーゼに?」
カインの声が低くなって、部屋の温度が下がった。
「自分の方がふさわしいって。
その時は、色々疲れてたので落ち込んでしまったけど、今日は平気でした。」
「そうなのか?無理するな。
あいつがもし、ふざけたことを言ったら俺が二度と口をきけなくしてやる」
「そんなことは望みません。カイさんがあの人と出会うのも嫌だし、自分に自信があれば大丈夫だってわかりましたから。メリッサさんのおかげです」
「雰囲気が変わったか?髪型を変えた?リーゼ、似合ってる。」
そのあと、二人分のお弁当を頼んで一緒に食べた。
「そうだリーゼ、王が家をくれるって」
「え?」
「どんな家がいい?土地はもらってたんだが、家も建ててくれるそうだ。リーゼの好みにしたらいい。」
「そんな、家なんて、どうして王が?」
「知らん。ただ、急な呼び出しもあるので王宮に近いところを勧められたが、魔法陣があれば転移できるし。
むしろ、王都の襲撃で団長クラスが皆死んでも困るから、田舎や郊外でもいいと言われた。」
「セルジオさんのお宅のようなのも素敵でしたね」
「俺もああいうのは良いと思う。
でも、リーゼがいれば何でもいい。あ、広すぎる家は困るかな。どこにいてもリーゼの気配が感じられる程度の家がいい」
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