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王女の婚姻について、日程を決めるために使者が来ることになった。 国賓なので王宮はどこも忙しい。 警備について魔術師団と騎士団は連日話し合っている。 相手国との関係は良いけれど、この婚姻をよく思わない第三国が何かを仕掛けてくる可能性も無いとは言いきれない。 リーゼは王女の話し相手と衣装の確認を任された。王宮のピリピリした空気が王女に伝わってしまうのは避けたい。 ただでさえ異国へ嫁ぐのは不安でいらっしゃるだろうから。 「王子は本を好まれるらしいわ。私は勉強が苦手なのだけれど大丈夫かしら」 「王女様、熱心にあちらの国の本を読まれていましたね。大丈夫ですよ。 でも、もしかしたら王子さまもこちらの事を知りたいと仰るかもしれません。 気分転換にこちらの童話はどうですか?」 「懐かしいわ!でも、こんな子供っぽいものを読むなんて……」 「昔話や童話には風習や信仰などが残されていて、興味深いのですよ。」 「そうかもしれないわね」 「今日は庭でお茶の用意をしますので、絵本などをお持ちしますね」 「ありがとう、リーゼ」 あとで先輩の侍女から誉められた。 「私たちが言っても王女様は勉強をするといって無理をされてたの。ありがとうリーゼ。」 「いえ、私も王女様に無理をして欲しくないんです。でも何かをしている方が気が紛れてらっしゃるのでしたら、せめてリラックスできるものの方が良いかなと」 「リーゼのそういう気遣いがありがたいのよ……。貴女が結婚して辞めたらどうしましょう。」 「それは、辞めるのを伸ばそうかと今、相談していまして」 「えっ!助かるわ。でも魔術師団長が一日でも早く結婚しないとリーゼ不足になって仕事ができなくなるって聞いたわよ」 「そんなことないですよ。なるべく迷惑のかからない時期に引き継ぎをしますね。籍だけ先に入れると思います」 使節団のやってくる日。 リーゼ達も緊張していた。 王女と使節団の皆様も宴の間に友好的な会話をすることができた。 うまく行きそうだ、と少し離れることにした。 宴会の間に侍女は交代で休憩を取る。 迷っている方がいないかそれとなく見たり、厨房へ伝言をしたり、休憩といっても仕事中なのでのんびりはできない。 廊下でしゃがみこんでいる人を見つけた。 「どうかされましたか」 「ペンを落としたのと、眼鏡を落としたのです」 青い髪の男性が床に座り込んでいる。 「お怪我はありませんか」 「すみません。貴女は……」 「王女様付きの侍女です。眼鏡というのはこれでしょうか」 そっと渡すと、 「ありがとうございます!」 と手のひらごと握られた。 「私は目が悪くて、これがないと困るのです」 ペンも近くで見つかった。 「それでは私はこれで」 「待ってください、何かお礼をさせてください」 「当然の事をしたまでですので、結構ですよ」 「可愛らしい侍女殿、どうか明日、あなたにお礼をしたいので迎えに行きます」 ええっと、これはちょっと困ったことに 騎士団が警告を告げている。門番が警笛をならしている。 空がみるみるうちに雲で覆われ、稲光が光っている。 「あの、放してください」 「急に天気が……お部屋まで送ります」 「ダメです!」 宴の会場でも何かの割れる音がする。 王女様が怖がってらっしゃるかもしれない 「遠慮なさらず」 男性が一歩近づいてきた。 「困ります、放してください」 あなたの身のために 「リーゼ」 後ろから抱き締めてくれるのは、ビリビリと魔力が漏れているカイン。 「……魔王?」 男性が後ろに下がる。 「わ、私の夫です!」 「リーゼ!」 カインが向き直ってぎゅうぎゅう抱き締めてきた。 「早く逃げてください」 小声で男性に言うと スススーーーッと走り去った。 「リーゼ、大丈夫か?変な男に絡まれていたな」 「ちょっと落とし物をして困ってらっしゃったから手伝っただけです。それなのに心配して……お仕事は大丈夫ですか?」 「問題ない」 指をパチンと鳴らせば雲は散って結界は元に戻る。 その日、国王陛下から 国の平和と安全のために早く入籍するようにとの王命が下された。
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