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「はあああああ、可愛い、リーゼ、かわいいいあいいいいいいい」
「団長、あと三秒です」
水晶玉を舐めんばかりに顔を近づけているのが、この国の魔術師のトップです。
周辺国からは「災厄の黒魔導帝」などという物騒な二つ名で呼ばれています。
部下からは
「最悪のエロ魔・童貞」
と陰で言われています。
「団長、あと二秒です、ヨダレ拭いてください」
「リーゼかわいいかわいい、俺の嫁はあかわいい」
「水晶玉は匂いはしませんのでハアハア止めてください。あと一秒です」
「はあ、リーゼ、リー」
「過呼吸なるくらいなら息止めてもらっていいですか?はい、今日のリーゼ時間終了です」
砂時計を片付ける副官。
「お前がリーゼと呼ぶな」
キリッと殺意を込めた魔力が壁に突き刺さる。
「もう入って大丈夫ですよ。団長は治りました。
」
ドアの向こうで固唾を呑んでいる新人魔術師に声をかける。
団長は、いつもの通りの無表情に戻っている。
部下の報告に指示を出す。
団長、カインは執務時間中に何度かリーゼ不足の発作を起こす。
それ以外は以前と同じ仕事量をこなしている。
城内のあちこちに鳥や虫、植物に模した「瞳」を隠し、リーゼの姿を水晶玉で見ている。
婚約者でなければ犯罪だ。
否、婚約者だろうが恋人だろうが、犯罪だ。人として、ギリッギリだ。
こんな団長ですいませんリーゼ嬢。どうか見捨てないで頂きたいと副官は今日も祈った。
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