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「リーゼ、大丈夫か?」 「大丈夫ですよ。それよりお仕事は大丈夫ですか?お忙しいんでしょう」 うまく笑えてる自信がなかったけれど、この優しい人に心配をかけてはいけないと思った。 「仕事なんかよりリーゼが大事だ」 ベッドの横に座って両手でリーゼの掛け布団の端っこを押さえる。 まるで 「犬ですね」 「犬だわ」 セルジオとカトリーヌが同時に呟いた。 「団長がリーゼにこれだけ夢中なのに、なんであんな噂がひどいのよ」 「なんですか?何かあったんですか?」 「女の嫉妬は女に向く、という話です。 団長が顔を出してみたら若くてまあまあカッコイイじゃないですか。だからみんなリーゼが地位につられて言い寄って、いい男を捕まえたって。要は妬みなんですけどね」 「うーん、カインは今まで結婚相手として射程範囲じゃなかったけど人のものになると羨ましいってことですか。女嫌いどころか人間嫌いで社交の場にも出てませんでしたしね……つくづく、よくリーゼ嬢がカインを気に入ってくれたものだと思いますよ」 カトリーヌが頷く。 「そう!そうなのよ。リーゼは本当にまっすぐに憧れてたの。私がどれだけ止めなさいとか、他の良い男を紹介しようか?って言っても……あ、ゴメンナサイ。その頃は枯れたオヤジだと思ってたので許してください」 「いや、いいですよお気になさらず」 「なんでセルジオが先に言うんだ」 「実際枯れてたでしょーが」 「……それでも、今までに恋人はいたんでしょう?私は他の男の人を知らないから、団長と釣り合わないかも」 リーゼがそう言ったあとで、口を押さえて ふるふると首を横にふる。 「ごめんなさい、こんなこと言うなんてどうかしてますね、私。」 「疲れてるのよ、あるわよそういう時。リーゼは普段から我慢しすぎなのよ」 背中を撫でるカトリーヌ。 カインは、 壁に頭をぶつけていた 「可愛い……俺の婚約者がかわいくて死にそう」 「いや、アンタそんな場合じゃないですからね?不安がってる婚約者にまともな言葉かけずに一人でデレデレと」 「はっ! そうだ、リーゼ、気にしなくていい。 リーゼが一番かわいい」 「はあ?」 カトリーヌが地底からのような声で聞き返す。 (訳:いま、ワタシの可愛い後輩を過去の女と比べやがりましたか) セルジオが襟首を掴んでベッドから引きずり離す リーゼは青くなる。 何かを間違えた。 「ちがう、リーゼが世界で一番可愛い、リーゼしか好きじゃない、大体今まで寄ってきた女はまともに付き合ったわけじゃなくて」 「い い か ら だ ま れ」 セルジオが痛いツボを押しながら言う。 染み込ませるように。 「すみませんね、まあ見ての通りうちの団長は仕事しかできない人間で、あとはポンコツです。だから今までも恋人と呼べる女性はいません。魔力目当てに寄ってきた人はいますが、こんなだからすぐにフラれています。リーゼ嬢が不安になるような案件は、ない、ですよね?」 「その通りだ、いててて、やめてくれセルジオ」 「まあ、実際は恋愛関係なくても『自称彼女』が出てきて、面倒だからと放ってきたので自業自得という面もあるんですが リーゼ嬢、一度、最強のライバルと会ってみませんか」 「あなたはまともな人間だと思いかけてたのに」 カトリーヌが叫んで、リーゼを守るように抱きしめた。 「身の安全は保証します」 にっこりと笑うので、リーゼは一呼吸して頷いた。
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