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「お待たせしました~」
料理が届けられた。
ウェイトレスは空気を読まない。
そんなものを気にしていたらやってられないのである。
とりあえず座った。
リーゼは気まずいけれど、カインは握った手に額をつけて懇願する
「お願い、リーゼ。俺のことを嫌いにならないで。大切にするから。がっかりさせないように頑張るから。」
ーーーーーー
「犬ね」
「犬ですね。忠犬」
店内の二人から死角になるところに魔術師達が座っている。
カトリーヌもいる。
セルジオは仕事を片付けているが、水晶玉で様子を見て指示を出す
「ここで、ご飯食べるのがそんなに大事なの?」
「王宮の人々に団長がリーゼ嬢にベタ惚れってのを印象つけるそうです。だから団長が情けないほうがいいって言ってましたよ」
セルジオ副団長が。
「あ、確かにあれを見たら魔術師団長のイメージ崩れるわ」
「団長、いまだにリーゼ嬢の前ではカッコつけたいみたいなんですけど、多分みっともないくらいのほうがリーゼ嬢は団長を捨てにくいだろうって言ってました」
セルジオ(既婚者)副団長が。
ーーーーーー
「やめないです。」
「本当に?」
パッと顔を上げるカイン
「忙しくて、ちょっと疲れちゃって、あと、その、怒らないですか?」
「リーゼに怒ることなんてない。」
「無理はして欲しくないんですけど、もうちょっと会いたいなって思って」
カインはフードをかぶって顔をおおった。
「見ないで。
もー、なにこの可愛いの……
勘弁してよ……リーゼさんもう無理……可愛いすぎ」
「あと、そういうの、好きです……」
ーーーーー
「あー!ヤバい!団長の魔力が暴走してる」
木に花が咲く
紅茶のグレードが上がる
馬の毛並みがキューティクルつやっつや
「リーゼ、恐ろしい子……」
「ええ、団長がフラれたらこの辺りは沼になります」
ーーーーー
「好きって、好きって、そういうのって?」
「普通の喋り方というか、カイさんだった時みたいな、気さくな感じの。お仕事の時は団長だから、かっこいいけどちょっと、遠くて」
カインは
ああ、とか
うう、とか
言いながら自分の体を殴っている。
奇行である。
「カイさんを知ってるのは私だけって思うと嬉しいから」
「もう、ほんとに、嬉しいんだけど呼吸が追い付かないくらい心臓が跳ねてるから、とりあえず食べませんか」
顔を覆った指の間から目を覗かせて、ゼイゼイという呼吸を抑えつつ言った。
それでリーゼも、喋りすぎたことに気付き恥ずかしくなった。ごまかすようにサンドイッチを食べた。
「あの頃は、俺も浮かれてて自分がどんな風だったか思い出せないんだけど。
リーゼの顔を見たくて、とにかくそれだけ、でした」
カインも俯いて食べ始めた。
赤い顔をして二人でひたすら食べた。
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