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#00あの子と彼の一触即発
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……………かたん、かたん。
剥き出しの鉄骨階段のクッション性は超最悪。
ヒールから直に伝わる振動が気色悪いし、耳朶に触れる鋭く冷たい音色がうるさいし、錆び付いた手摺にも触りたくないし、なんなら〝階段〟って時点で萎える。
駅に近い立地であるのに、線路沿いに建つものだから、電車の音が煩い。
目線の先は青白い街灯が照らす夜道。ホテル街が近いからか行き交う人はカップルも多い。飲み会帰りのサラリーマン、ぼんやりと佇む男性、飼い犬の鳴き声、寂れたアパート。
挙げてしまえば〝最悪〟だらけ。
名の知れた企業の華の営業職というポジションに、もう、五年も勤めているらしいのに、こんな場所に住もうと思う男の気が知れない。
階段をのぼりきるまでに、弾んだ呼吸を整える。
ふう、とひと息に夜の空気を吸い込めば、今日もなんとかミッションクリア。
息を切らして会おうものなら、あの男が調子づいて、ふふんと鼻を鳴らして見下すに違いない。
あぁ不快だ。
会う前から人を不快にさせる人間がいてたまるか。
人をそこまで不快にさせるって、一種のウイルスでも持っているに違いない。
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