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第一章:プロローグ カラスカラス、俺が次に転生するのは?
「俺がアイツを仕留めてやるよ」
牧野は暗がりでアイツの姿を確認する。
そして、まさに猪突猛進に向かって行った。
イノシシになったとはいえ、牧野は冷静さを失ってないな。
そう思えば俺と牧野はこの世界に来て、もう一月は経った頃だ。
最近はベジタリアンな人間の街へ襲いに行くも、奴らは武器を持って対抗してくる。
奴らは、俺が空から確認しても分からないくらいの巧妙な罠を田畑に張ったりしてるから、牧野も追い込まれることが何度もあった。
それでも、俺達は生きて行くことに必死だから、何度も挑戦した。
狩のやり方も他の動物の狩を見て参考にしたから、今、牧野は小動物の捕食も難なくこなせるようになったみたいだ。
「おい、やったぜ鈴木」
あ、一つ言い忘れたが、あくまで俺は空を飛ぶ鳥のあのカラスで、牧野は地を歩く攻撃的な動物のあのイノシシだ。
人語を話しているように見せてるがそれはあなた達に分かるようにしてるだけで、本当は「カア、カア」とか「フゴッ、フゴッ」といった鳴き声で会話している。
違う動物同士だけど意志疎通はバッチリだ。
狩に関しては、俺がカラスの特性を生かして空から偵察、そして奇襲。あとはカアカアとあの甲高い鳴き声を発すれば獲物の動きも錯乱できる。
牧野は怯んだ獲物を目掛けて突進攻撃を喰らわせる。致命傷を与えればこっちのもの、今日のご馳走にありつけるというわけだ。
獲物を捕らえた牧野を見て、中々やるな、なんて思ってたら牧野の背後から黒い毛皮の獣が近付いているのに気が付いた。
それは牙を剥き出しにしているのが分かる。
敵意も剥き出しにしている。
「は? お、おい牧野ぉーーー! 後ろ、後ろだ!」
「あん?」
次の瞬間、牧野は鋭い牙に捕まれてあっけなく動けなくなった。
鋭い牙の主はさっき牧野が仕留めたウサギごと、牧野を引きずって森の中へ消えて去ってしまった。
俺は上空からその様子を見ていたが、どうすることも出来なかった。牧野が殺された、のだと思った。
俺は状況を理解してる。
その俺自身、いつの間にか自慢の漆黒の翼に穴を空けられていた。
下の方に人間の姿が見える。猟銃を構えている中年ぐらいの男だ。
俺の体はすぐに下降して行く。そして、勢い良く地面に叩き付けられた。
意識が遠退いてきた。牧野は本当にどうしたのだろう、死んでしまったのか。
「ち、ちくしょう……俺もまた死ぬのか」
この世界に転生されてからの走馬灯が駆け巡る。
なんか、どこかで似たような流れ見た気がするな。
ああ、そうか、あの時は確か吊り橋で、俺と牧野がいて、他に誰か2人いて……あと、なんだっけ。
いや、それより体がふんわりしてきた。
「や、やっと、慣れて……きたのになぁ」
呼吸が苦し。牧野、やっと俺達も生きるためにこれからって時についてなかったな。
……次は普通に人間がいいな。
もし、また転生出来るのなら。
そう、普通の人間を、求む。
「……」
ああ、まだか、時間がかかりそうだな。
「おい! お前だ!」
声が頭の中に響く、誰の声だ?
「お前が、このカラスのを回収しろ、俺はさっきのヤツを追う!」
誰か分からないが、声がうるさい。
そして、しばらくしてさっきの声とは別の男性の声が聞こえてきた。
「カラス鈴木さん、お疲れ様です。早速次に行きましょう」
『ああ、そうか、そうだったね』
徐々に思い出してきた。
『うん、分かった次に行こうか』
「では、進化転生です」
そこでカラスである俺の意識は途切れた。
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