男の段差

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事の発端(ほったん)は数十分ほど前。 幼馴染の陽介が“秘密”を見付けた橋の下で、このミッションの幕は上がった。 *** 終業式を終えた炎天の昼下がり。パンパンに膨らんだランドセルを背負った僕と陽介は、重たい荷物もなんのその。来たる夏休みへのパッションを押さえきれず、いつもの下校ルートからは外れた川沿いの道を歩いていた。 途中で見付けた良い感じの石ころを交互に蹴っ飛ばしていると、ふいに陽介が立ち止まって草むらの中へと駆け出した。 「おい、やべえもん見つけちまった!」 声のする方へ顔を向けると、陽介が興奮気味に手招きをしていた。 (せわ)しなくぶんぶん振り回される右手とは対照的に、視線はしゃがんだ足元にびたりと貼り付いている。 「なんだよ、500円玉でも落ちてたか?」 「バカ!んな普通なもんじゃねぇって!」 どうやら陽介と僕の、500円玉に対する認識にはいささか格差があった様だ。 僕にとっては一月に一度しか手に入らないレアアイテムでも、陽介にとってはノーマルアイテムだった、ということか… 「早くこっち来いって!」 幼馴染との感覚の違いにうちひしがれる僕を他所(よそ)に、陽介はますます鼻息を荒げて手招きをしている。 「500円玉よりつまんないもんだったら、覚えとけよ。」 ぼやきながら陽介の隣にしゃがんで、やべぇもんとやらを覗き込む。
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