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「これは…」
僕は思わず生唾を飲んだ。
そこには開かれた状態で乱雑に捨てられた雑誌が落ちていた。
水気を含んで所々がたわんだ紙面には、見開きで大きく一枚のカラー写真が印刷されている。
それは紛うことなく、エッチな本だった。
長方形の紙面いっぱいにうつぶせで横たわるお姉さんは、一切の衣類を身に付けることなく、弓なりにたわんだ目を輝かせて完璧な笑顔をこちらに振りまいている。
決して逸らされることのないその視線に射すくめられて、かえってこっちがたじろいでしまう。なんだか耳が異様に熱い。
これは確かに、500円玉よりもずっとレア度が高いアイテムなのかも知れない…
しばらく(もしかしたら一瞬)の沈黙を破ったのは陽介だった。
「おい、どうするよ、これ。」
「ど、どうするって、な、何をだよ?」
お互いに目を合わせずに話す。
「いや、分かんないなら別にいいんだ。お前が興味ないって言うんなら…これはオレがもらっていくからよ。」
その言葉に思わず陽介の方へ視線を移すと、相変わらず足元を凝視していた。
眉間にシワを寄せて食い入るようにエロ本を見つめるその横顔には、欲しいものを手に入れようとする固い決意が漲って見える。
なんだかよくわからないけれど、いつもアホなことばかり言っている幼馴染が少しだけ、かっこよく見えてきた。
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