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こうして秘密を分けあった僕と陽介は、半分になったお姉さんをそれぞれに持ち、それぞれの帰路に着いたのだった。
* * *
さて、問題はここからだ。
眼前の見慣れた一戸建ては至って平凡な二階建てだけれど、秘密を持ち帰るという行為のうしろめたさからだろうか。なんだか今日は威圧感を持ってそこにそびえているような気がする。
エロ本を見た時とはまた別の、冷ややかな動悸がじわりとせり上がってくる。
額に滲んだ汗は、この暑さだけが原因と言うわけではなさそうだ。
いっそこんなものを持ち帰ることさえしなければ、穏やかな昼下がりを気兼ねなく満喫することも出来たのだろう。
しかし、ここでランドセルの中の秘密を手放すことは、僕には出来そうにない。
もしここで半分になったお姉さん(僕の分け前は下半身だった)を手放してしまえば、あの橋の下で僕と陽介の間に生まれた大いなる連帯が損なわれてしまうような気がする。
それに一度手にした秘密は、単純に魅惑的だった。アダムとイブが林檎を齧ってしまったのだって、きっと似たような理由なんじゃないだろうか。
たとえどれだけ厳重に禁じられても、たぶん僕たちはどの道、世界の秘密から目を反らすことは出来ないだろう。きっとはじめからそういう風に出来ているのだ。
しかしだからといって、この神秘的な読み物を堂々と家に持ち帰れるかどうかは、また別の話だ…
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