Last Fight 君の犠牲の上での成果なんて、何の意味もない

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なんで……こんなことに……。 私は今、かつて働いていた、元職場……YAIDAのロビーに来ていた。 かつては、鼻歌混じりでスキップまでした場所だったは、今は緊張で心臓がはち切れそう。 それは、何も、元古巣にいる……というだけの気持ちではない。 その理由の1つ目は、河西君が言っていた「プチイベント」……つまり、担当企業のシャッフルだ。 基本的には、特定の企業を長く受け持つ方が、営業とクライアント先の人事の絆が深まる。 だが、会社の方針として1年に1〜2回、取引先を一部シャッフルし、馴れ合いにならないようにしているとのことだった。 そのシャッフルで、私は、まさかの古巣を担当することになったのだ。 YAIDAは、採用だけでも数千万円以上のお金が動く大企業。 他の人材会社もこぞってここの採用を取りにくる。 そんな重要な企業に、まだ人材営業として1年も経っていない私が担当になるのだ。 ……緊張するな、と言う方がおかしい。 そして2つ目はと言うと……。 「おい。ぼーっとするなよ」 「……何で加藤さんが、私の挨拶訪問についてくるんですか」 「入社1年未満の人間に任せるんだ。……僕も責任者としてついてくるのが当然だろう」 ……だったらそんな企業の担当を、私にしなければ良いのに……。 このシャッフルで決まる企業と営業の組み合わせは、マネージャー陣の意向が強く反映されると聞く。 つまり、この状況にしたのは、加藤さんと言っても過言ではない。 「ぼーっとなんか、してる気持ちの余裕なんかないですよ」 それは、違う意味でも……だ。 加藤さんは私の肩をぽんっと叩くと 「行くよ」 と言って、私の前を歩き始めた。颯爽と。 その動きがあまりにも自然で綺麗だったので、一瞬だけ、見惚れそうになった。
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