Last Fight 君の犠牲の上での成果なんて、何の意味もない

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<LINEメッセージ> 加藤 「声は出さないで。さっきの件」 高井 「わかってます」 加藤 「会議室取れる?会社戻ったらすぐにこの件話し合うから」 高井 「わかりました」 加藤 「…………あのさ」 高井 「なんですか」 加藤 「もうちょっと、可愛げがあるLINEとかできないの?」 高井 「どういうことでしょうか」 加藤 「例えば、こんなスタンプを押してみたらどうなの」 加藤スタンプ パンダが「承知しましたっ」と言っている。 高井 「上司にスタンプ押せるわけないじゃないですか」 加藤スタンプ 猫が「おねがいにゃん」と言っている。 高井 「しません」 加藤スタンプ うさぎが「どうして?」と言っている 高井 「上司ですから」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ……なんだ?これは。 最寄駅に着くまで、無言でぽちぽち、地味〜に行われたLINEの応酬。 まさか誰も、隣同士に座った、スマホを凝視している人間達が、LINE上でくだらない言い合いをしているなんて、夢にも思わないだろう。 加藤さんは、日本語を打つのがめんどくさくなったのか、どんどんスタンプを連打してきたし……。 しかも。 そのスタンプのラインナップと言えば……一体誰の趣味なんだよ……と聞きたくなる程、可愛すぎるゆるキャラばかり。 スマホや、他の小物は、黒や寒色系の色を基調とした、いかにもデキるビジネスパーソンが持つようなものだと言うのに。 あ。 「あの……加藤さん」 「何?」 駅からオフィスまで歩きながら、私は聞いてみた。 「何で加藤さん、あんな可愛いスタンプ持ってるんですか」 「……悪い?」 「いえ、悪いわけじゃないですけど……」 「じゃあ何でそんなこと聞くの?」 何だろう。 また、機嫌が悪い。 もう、この人が機嫌が悪くなるトリガーが分からない……! それに……あのゆるキャラスタンプは、今20代女子に絶大な 人気を誇るインスタ発のもの。 しかも見たところ、企業とのコラボスタンプではなくて、ちゃんと自分で買って手に入れているもの……。 ……あーそうか。 きっと……女の子を喜ばせようとして買ったのかな〜。 元カノ、とか……いたんだろうなー……。 いないはず、ないよなぁ。 やっぱり、何かモヤモヤしてきた……! こんなこと、考えるんじゃなかった……。 私はしまったばかりのプライベートスマホを取り出し、加藤さん宛に1個スタンプだけ送りつけた。 それは、きっと加藤さんのような、リア充は決して使わないようなやつ。 その名も「リア充爆発しろ」スタンプ。
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