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「加藤さん……あの……」
どうして?
私が聞く前に
「いつ?」
加藤さんが突拍子もなく聞いてきた。
「え?」
いつ……とは?
加藤さんから与えられた仕事は、終わらせた……はずだけど……何か、抜けてたっけ……?
私が内心焦っていると、加藤さんが私の服を摘んだ。
「あの服、いつ着てくるの?」
あの服とは。
それは……あの日……加藤さんに渡された、あの服のことだということは、分かってしまった。
瞬時に。
「……何のことでしょう」
でも私は、それを知らないふりをしたかった。
違う。
無かったことに、したかった。
でも。
「あの服を着られない理由でも、あるの?」
加藤さんは、やっぱりできる人だから。
彼は、容赦無く私を追い込んでいく。
「……あんな服……会社になんか着られませんよ」
「どうして」
「値段高すぎです」
「僕のスーツよりは安い」
げっ。
この人、そんな高いスーツ着ていたのか。
って、そうじゃなくて……!
「服は……人を選びますから……!」
少なくとも、あの服は私のキャラには合わない。
そう、言われる可能性がとても高い。
綺麗めの、センスが光る、高級品ということは手触りでわかる。
そんな服、私なんかが着たら……絶対バカにされてしまう。
私の言い訳に、加藤さんは納得したのかしてないのか。
服の話題については、これ以上は触れなくなった。
ただ、次のが、もっと……問題だった。
「君、河西とどういう関係なの?」
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