Last Fight 君の犠牲の上での成果なんて、何の意味もない

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「高井さん……?どうしました?」 私は、三条ちゃんになんて声をかけるべきなのか、迷った。 三条ちゃんは、知らないはずだ。 自分を狙っている薄汚い男を、今日までずっと私と元木さんが2人で、YAIDAという世界的有名企業へ入社させるために日々格闘し続けたということを。 「あ、ううん。何でもない。行こう」 私は、念のためにプライベート用のスマホを片手に持ってから、三条ちゃんの一歩後ろを歩いた。 何か動きがあった時に、すぐに私が気づけるように。 三条ちゃんを庇えるように。 そして30分後。 三条ちゃんの家の最寄駅に着いた。 駅からは念のためにタクシーを使おうと考えていたが、その頃には、すっかり鮫島の姿は消えていた。 きっと、私の存在に気付いたからだろう……と思った。 やっぱり、付いてきて、良かった。 「高井さん……あの……もうあの人……居ないですよね?」 「そうだね。きっと私の事怖がったんじゃない?」 私は、少しでも三条ちゃんの不安を取り除きたくて、わざとガハハとガサツに笑ってみせた。 「高井さん。ここからは私、1人で大丈夫です」 「え、でも……」 「タクシー使えば、すぐですし。それに……もう遅いので……どうか早めに帰ってください」 「もしかして、三条ちゃん……私の心配してくれてるの?」 「当たり前じゃないですか!高井さんだって、女の子なんですから!」 「あはは。私は平気よ。30代のおばさんだし」 「そんな事言わないでください!私だって、高井さんに何かあったらと思うと……」 また、三条ちゃんが涙を目に溜め始めた。 一体この華奢な体のどこに、涙用の大きなタンクがあるというのか。 「大丈夫。それより……」 私は、三条ちゃんには、鮫島の事を伝えておこうと思ったので、簡単に自分が担当している企業に推薦している人物であることは打ち明けた。 その上で、私は覚悟を決めた。 この件は、私1人で処理をする、と。 ふと、この時加藤さんの顔がチラついた。 「勝手なことをするな」 と、怒られるかもしれない。 もしかしたら、逆にもう、私に関心をなくしたかもしれない……。 ……うん。 それでいい。 そう、思うことに、しよう。 それよりも。 私が、鮫島の運命を握っていると言っても過言ではない。 さらに私だって女ではある。 女の私、YAIDA担当の私じゃなきゃ、できないことがあるだろう。 それに、20代の若い子たちとは、年季が違う。 大丈夫……。きっと、うまくいく。 この案件の成功も、三条ちゃんの身も、私が守ってみせる。 必ず。
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