Last Fight 君の犠牲の上での成果なんて、何の意味もない

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私が立てた作戦というのは、身代わり作戦という、とてもシンプルなもの。 三条ちゃんの服を私が着て、三条ちゃんを追いかけている鮫島を引きつける。 鮫島が、三条ちゃんだと思っている私に何らかの形で接触してきたら、そのタイミングを見計らって私が鮫島を捕まえる。 そして、私が、鮫島を説得する。 三条ちゃんを追いかけるのを止めること。 YAIDAの入社前にトラブルを起こさないようにすること。 その話を、あらかじめ三条ちゃんには今朝LINEでした。 すると案の定優しい天使のような三条ちゃんは、すぐにLINE通話をかけてきた。 「高井さん1人だけでやるなんて、危険すぎます!だめです!せめて元木さんにも手伝ってもらいましょう!元木さんがCAとしての担当なんですよね?」 「それこそダメだよ」 「どうして……!」 「元木さん、この案件に人生賭けてるんだよ。鮫島が内定出た時、すごく喜んでた」 「それなら尚更、元木さんに伝えないと……!」 「三条ちゃん。気持ちはすっごく嬉しいよ。けれど、この件はできれば、私と三条ちゃんのところで止めておきたい」 「高井さん……」 「もちろん、三条ちゃんが傷つくような事をしたらだめだし、させるつもりもない。本当に三条ちゃんが怪我しそうなことがあったら、私は躊躇なく警察に連絡する」 「だったら今でも」 「大丈夫!私は大丈夫だから!……あ、もうそろそろ用意しないと」 「高井さん、まっ」 ぴっ。 LINE通話を無理やり切ってから、私は今日の作戦のことを考えた。 三条ちゃんが、私の心配をしてくれるのは嬉しい。 それに、もしかすると三条ちゃんは、私がこれからしようとしていることを察して、止めてくれているのかもしれない。 私は、その時のことを考えて……悪寒が走ってしまった。 でも、それは決して恐怖なんかじゃない。 元木さんの夢と、三条ちゃんの今を助けられるなら……それと引き換えなら、きっと私は我慢できる……かもしれない。 いや、我慢……しなければならない。 それは、きっと、私の成果にも大きくつながるし、会社のためにもなる。 それに……。 私はLINEの画面に見える「加藤」の文字を一瞬見て、そのままスマホの画面を消した。 それから、加藤さんが押し付けてきた服を持って 会社に来た。 これが、今朝の私の動き。
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