Last Fight 君の犠牲の上での成果なんて、何の意味もない

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洋服のサイズはギリギリ。 胸の詰め物も、どうにか形になった。 私は定時後に速攻でトイレで着替えてから、オフィスの周囲を歩いてみた。 まだ、鮫島の姿はない。 「よし、三条ちゃんに報告」 ぽちっと打ち込んで送信。 既読は、まだつかない。 私は周囲を見渡しながら、自分がストーカーをするならどこでターゲットを待つかを考えた。 ずっといても、違和感がない場所。 候補は3つ。 1つ目はカフェ。1階のテラス席にいれば、容易に観察ができる。 2つ目はコンビニ。……この間鮫島がいたのも、別の駅とはいえ、やはりコンビニの……それも雑誌エリアだった。 最後3つ目は、やはり駅の改札。 待ち合わせをしている人が大勢いるため、立っているだけであれば一切目立たない。 今私が立っている場所からは、カフェとコンビニは見える。 鮫島の姿は、どちらにもない。 まだ、ここに来ていないということは……やはり、駅で待っているべきか。 もしかしたら、今日は来ないかも知れない、とも考えたが、三条ちゃんの口ぶりでは、ほぼほぼ毎日、後をつけられている様子だった。 まさか、今日急に来なくなるなんてことは……。 ちょっとだけ不安になりながら、駅の改札に向かってみた。 が、すぐにそれが杞憂だということはわかった。 いたのだ。 私にとってのターゲット……鮫島が。確かに。 そして、向こうも、自分のターゲットらしき人物である私を視界に捉えたことが分かった。 ここからが、勝負だ。 私は、人との待ち合わせのフリをして、スマホを操作する。 このタイミングで、LINEを使って三条ちゃんに連絡。 鮫島を駅で見つけた、だからまだ、外に出ないように、と。 「よし、これで大丈夫だろう……」 と、言葉に出してみて気づいた。 私の声は、震えている。 どうしよう。 前に一歩進まなくては。 改札に入って、三条ちゃんの家の方に行く電車に乗って……それから……。 考えただけで、悪寒がした。 ふと。この時偶然、加藤さんの名前が目に入った。 今まで、何だか怖くて既読にできなかったLINE。 この時、何を考えたのか……もしくは何も考えられなかったのか……それは自分のことなのにわからない。 ただ、事実として。 つい、加藤さんのLINEを開いてしまった。 中には可愛いスタンプが押されているだけ。 いつもだったら、イライラしたかもしれないそのスタンプでさえ、今はほんの少しだけ勇気をくれた。 「お返し、お待たせしました……加藤さん」 もしかしたら、もうこのお返しは加藤さんにとっては無駄になるかもしれない。 だけど今日は、何か押しておきたかった。 私は、「リア充爆発しろ」スタンプだけぽちっと押してから、改札を通り抜けた。 鮫島が、私の後についてきていることは、確認できた。
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