Last Fight 君の犠牲の上での成果なんて、何の意味もない

28/33
610人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
確かに、ネット上で「紹介Fee」の金額の目安は出ている。 なので、自分の現年収と、転職先のオファー面談の値段を知って、 にしても……鮫島のこの言い方……もっと、人材業界のことを詳しく知りすぎている気もする。 「ああ、1000万円以上っていうのは、部の予算達成の件だね、ええと……何ちゃんって言うの?」 「……名乗る程のことでは」 「ああそうだ。YAIDAの営業ということは、私は元木君から名前は聞いていたはずだな……ふむ……ああ、そうだそうだ、高井さんだ。元木君から、よく聞いていたよ」 この人、記憶力めちゃくちゃ良い……!? 「ふむ……そうか……君が、高井さん……ねぇ……」 気持ち悪い。 鮫島は、私を品定めするような目で、上から下まで隅々と見てくる。 一刻も早く離れたい。 だけど、今ここで離れたら、何のためにこんなことをしたのか、分からなくなってしまう……! 「私のことはいいけど、あんたが追いかけてた女の子のことは、2度と付き纏わないで」 「良いよ」 「え」 間髪入れずに即答された。 「あの子は、胸が大きくて……顔を埋めたらさぞ気持ちいいだろうと思って狙ってたけど……」 そう言うと、鮫島は、私が掴んでいる方の手とは反対の手で、私の太もも部分を撫でてきた。 「っ!!??」 気持ち悪い。 悪寒がする。 嫌だ。 そう言いたくても、金縛りにあったかのように声がうまく出てこない。 そんな中鮫島は、慣れた手つきで、太ももから、少しずつ手を上に走らせていく。 どんどん、触られたくない箇所ナンバー1……お尻の部分まで手が動く。 「ねえ、高井さん、私と賭けをしよう」 「かっ……賭け?」 「そう。賭けだ。君が今すぐ泣き叫び、誰か助けを呼ぶのなら、私は喜んで警察に行こう」 「なっ……!?」 「だがその結果……君や君の大事な人たちの成果は……霞となって消える。それこそうまくいけば君と元木君は100万ずつ……君たちの部署には1000万ってところか……その成果が消えることになるんだ」 「何で……そのこと……」 「そんなこと、どうだっていいだろう?それより、どうする?声を出す?出さない?私は、どちらでもいいんだ。どちらでも、欲しいものは手に入るからね……」 「欲しい物……?」 「君が声を出したら、私は君たちの絶望に打ちひしがれる顔が見られる。叶うはずだった夢が破れた時の人間の苦痛に歪む顔は、私のオーガズムを呼ぶ。もちろん、声を出さない場合は……」 鮫島は私の下着の中に手を入れてくる。 「んっ!?」 「ほら……どうだい……?気持ちいいだろ?」 私は、声をうまく出せない代わりに、首を横に振って意思表示をした。 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……!! 「いいね、君……あの子より顔は全然大したことなくてつまらないかと思ったけど……意外とそそる部分もあるんだね」 私は、体に襲いかかる気持ち悪い感触を耐え切ることで、もういっぱいいっぱいだった。 頭が回らない。 恐怖だけがどんどん募る。 「ほら、声を出しな。君が声を出せば、入社前逮捕……っていうのかな……。そんな前代未聞なことを引き起こしたら、君は……企業から出禁になるんじゃないか?」 鮫島は、どんどんこちらの心理を突いて、抉り出してくる。 「もし、声を出さないを選択したら……悪いようにはしない。君でいい。君が、私を慰めてくれるかい?もし君が処女だった場合は、頂いてしまうかもしれないが」 覚悟は……してた。 痴漢をやめるように説得すると決めた時から、多少触られるのは覚悟の上だった。 でも、鮫島が要求してきたことは、それよりもずっと生々しく、汚らしい取引だった。 くそっ……。 どうせなら、そこまで覚悟しておくべきだったのか……!? 私は、悔しさで涙が出てきた。 「おやおや、泣いて……可愛いね……しょうがない……私が慰めてあげよう」 鮫島が、そう言って私の首筋に自分の唇を寄せようとしてきた、その時だった。 「こいつに触れるな!!!」 という声と共に、鮫島が誰グーで殴られていた。 私は、その人が誰か……声を聞いただけで分かってしまった。 「加藤さん……!どうして!?」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!