Last Fight 君の犠牲の上での成果なんて、何の意味もない

30/33
610人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
「お邪魔しまーす……」 また、ここに来てしまった。 加藤さんの家に。 あれから加藤さんは、そのまま電車ではなくタクシーを使い、私を再びここに連れてきてくれた。 扉が閉まり、外と内側の世界に境界ができた時だった。 加藤さんが、私を背後から、強く抱きしめてきた。 「よかった……無事で……」 「加藤さん……」 私は、しばらく加藤さんにされるがままになっていた。 だけど……やっぱりこれは気になる。 「どうして……助けに来てくれたんですか……?」 「…………それは…………」 「え?」 加藤さんが、1回私から離れ、そのまま私の手をとってベンチに座らせる。 それから加藤さんも私の横に座り、また無言が続いた。 そして…… 「……………………三条さん……だっけ?」 「……え?」 何故、このタイミングで三条ちゃんの名前が? 三条ちゃん、加藤さんに相談した……とか? 「彼女を問い詰めた」 「え!?」 な、なんで!? 「問い詰めって、どういうことですか?」 「どうして君が、その服着てるのって?」 そこから!? というか、それ!? 加藤さん、自分で人のために買った服なんか覚えてるの!? 「あの服は、あの店で1点しかないんだ。だから君以外は持っているはずがないんだ」 ……まじか。 あ、だから三条ちゃん、貰えないって言ってたんだ。 そのこと知ってたから。 でもあの時は、私が買った……ということに、三条ちゃんの中ではなってたはずだから……さぞ混乱したんだろうな……三条ちゃん……。 「それで、三条さんにこの計画のことを聞いた」 加藤さん、それは無理やり吐かせた……ということですよね……。 「それにもう1つ……」 加藤さんは、スマホ画面を私に見せた。 「これは……」 「ずっと人のLINE無視してたのに、このタイミングで既読になって、しかもご丁寧にスタンプまで押されてる。何かあったと考えて当然でしょう?」 「あはははは……」 笑ってごまかすしかない。 「それで急いで会社出て……君があの電車に乗った時、どうにか僕も滑り込みで一緒に乗ることができた」 それは……知らなかった。 確かにオフィスから駅の改札までの距離は10分もないけれども。 一体、どれくらいの距離を、どれくらいの速度で走ってくれたのだろう。 この人は。 私のために。 「本当は……あの男が、君の胸に触ったのを見た時に殺してやりたかったよ」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!