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「ねぇ、覚えてる?」
涼しい春の風にカーディガンを揺らすその笑顔は、私の知ってる頃のままのアカリだった。
アカリの口から楽しそうに嬉しそうに、物語のように綴られる言葉は紛れもなく私たちの青春そのものだった。
「ハルカは、約束をちゃんと叶えたんだねぇ」
涙を堪えて呟く言葉に、私の方が泣き出しそうになってしまう。
「うん、アカリと最後の会話だったから」
「ちょっぴり、羨ましいなぁ」
私の周りを囲うように立っている家族を切ない瞳で見つめながら、私の手を優しく握りしめた。
軽く握り返した手のぬくもりはあの頃と1ミリも変わっていない。疑いたくなるような事実なのに、私は目の前の少女がアカリだと確信していた。
「思い出話でも、少しだけしようよ」
少しだけ戸惑ってから、頷く。体が、心が、思い出す。あの頃の、青くて眩しい日々を。
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