彼の心情と考え

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彼の心情と考え

 彼は、普通の大学生だった。家から遠い平均レベルの大学に、電車で通うありきたりな大学生。人と関わるのは、授業の必要なときだけで、それ以外はほとんど一人でいた。彼は、人と関わることを避けていた。彼は、別に人と喋ることが苦手ではないし、相手の話題に合わせるのが得意なので、会話するのに困りはしない。だが、何しろ疲れてしまう。彼にとって、誰かと関わることは、疲労を蓄積させるくせに、学びも楽しみもないことだった。    今時は、興味がある話はネットでいくらでも聞けるし、情報もネットで知れる。だから彼は、人と関わることより、そっちを使っていた方が疲労やトラブルなどのデメリットがなく、メリットが大きいと考えた。  彼は、友達以外の交際相手も必要とはしていない。彼に異性に惹かれる感情はあるのだが、その人と関わることで受ける疲労を考えるとその気持ちは消えていき、やがて面倒くさいという気持ちが湧き上がってしまうのだ。多くの人は、一度は経験してみたいものと考えるのだが、彼はその経験すら面倒くさいと感じている。つまり、彼は何もしたがらないのだ。
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