新しい日常

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新しい日常

 「もうダメ!」  赤髪赤眼に僧侶の姿をした少年が叫んだ。  「疲れたぁ。もう歩きたくないっ!!」  「まったく、だらしないぞ孔士」  腰まで伸びた漆黒の髪に青白い着物を着た日本人形のように可憐な少女が孔士をたしなめる。  「もう少しで町に着くはずだ。今日はそこで宿をとるから後ちょっと頑張れ」  白い着物に黒い袴、腰には二本の刀をたずさえ首には白いマフラーを巻いた少年が励ます。  「しかし結構な速さで移動しているね」  「そうだなこのペースで行くと思ったより速く長崎に着きそうだ」  「ちょっと飛ばしすぎじゃない?」  疲れでぐったりする孔士。  「そうかぁ? まぁ速いに超したことはないからな」  「僕が疲れる。美琴が来てから進むスピードが異様に速くて困る」  「いいじゃないか頑張れ」  「なんであいつはあんなに元気なんだよ」  「・・・わからん」  旅慣れしているはずの二人より元気に前を歩く美琴。  江戸を旅立ってからずっとこんな調子である。  「なぁ禅宗。長崎とはどんな所なのだ?」  「日本でただ一カ所の外国と貿易をしている町だよ。他国の文化や技術を見ることができる」  「文化や技術?」  「言葉や着ている服など様々なものが日本とは違うんだ。俺も詳しくは知らないが武器や神具に魔術の技術はかなり進んでいるらしい」  「へぇ~面白そうだな!!」  「日本では神具使いはほとんどいないが異国にはそこそこいるんじゃないのか?」  「孔士みたいなのが沢山いるのはなんだか嫌だな」  顔をしかめる美琴。  「それは僕の台詞だよっ!!」  疲れたと嘆いていた孔士が声を張り上げて叫ぶ。  「うるさい。バカ孔士」  あっかんべえすると先を歩き出す。  「あの女~。本当にムカつく」  「はは・・・あまり喧嘩するなよ」  「僕は好きでしているわけじゃないやい」    嬉しそうに微笑む禅宗。    「最近はずいぶんと笑うようになったな」  「あれが炎滅の巫女なんて誰も信じないよね」  「まったくだ」  孔士は戦場で美琴に殺されかけた過去がある。そのせいで最初の頃はかなり警戒していたが一緒に旅をするに連れて美琴の性格が分かってくると少しずつ警戒を解いていった。  「ちゃんと美琴の力は封印されているんだよね?」  「ああ俺が印を唱えないとアマテラスの力は使えない」  成り行きとはいえ右手にアマテラス左手に雷神を封印している禅宗。  「禅はとんでもないのを体に封印しちゃったね」  「孔士の力も十分にとんでもないよ」  孔士の雷神も美琴に勝るとも劣らない危険な力であった。  「二人とも何をしている?」  子供のように二人を急かす美琴。  「おう!!ほら行くぞ」  「へいへい」  禅宗らは美琴の後ろをとぼとぼと歩いていく。  こうして美琴に引っ張られながら歩むのが禅宗たちの新しい日常である。
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