6 パパ VS 私

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6 パパ VS 私

 茜流柔術組手演武の順番が来た。私とパパは、演武場で正座をして礼をした。今まで練習してきた技を、パパと思いっきり出し合った。  演武を4つもやるとお互い精神的にも肉体的にも疲れてくる。パパは、フウフウと息が上がっている。私も、(ひたい)の汗が(ほほ)(つた)った。  いよいよ5番目の演武だ。これで最後。パパはどんな攻撃をしてくるのか。  パパは、少し低い姿勢(しせい)になった。急所を狙われまいと、少し手を前に伸ばして構えた。  その手が邪魔(じゃま)になって、パパがどこから攻撃するのかわからない。パパが動いた。  右足の蹴りが来た。私は、とっさに右側に避けた。その時、パパの右手は私のうなじの(えり)をつかんだ。迂闊(うかつ)にも私はパパに背を向けてしまった。さらにパパは、すぐさま私の道着(どうぎ)の帯を掴んだ。どこかに当身をしようとも、後ろ向きでは手が届かない。  パパは、その後なんと私を頭上に持ち上げた。私は天井(てんじょう)を見るような体制(たいせい)で、パパに重量挙(じゅうりょうあ)げのように持ち上げられてしまった。私は、思いっきり体を動かして振りほどこうとした。 「ははは、無駄だ亜樹。これで放り投げればお前は、終わりだ。小学生が大人に勝とうなどと百万年も早いのだ。降参(こうさん)しろ亜樹! 」  だめだ、投げられる。一番近い急所(きゅうしょ)はどこだ? 「五つ数えて逃げられなかったら終わりだ! 」  パパはカウントダウンを始めた。 「ごー。よんー。さんー。にー 」  私は、最後の手段に出る覚悟を決めた。パパ、ママごめん。私は、私を守り切るから 「いちー」  パパが、言ったとき、私は、パパの脳天(のうてん)めがけて茜流の当身を突いた。  当身は、見事(みごと)直撃(ちょくげき)して、パパは、私を離して床に(くず)れた。しかし、これは一瞬ひるますだけだ。床に落ちた私をパパはまた掴みにかかった。しかし私はパパの(また)の間に落ちていた。 「ママ! 約束やぶってごめん! 本気で金的蹴するよ」  と言いうが早く、私は茜流金的蹴をパパに入れていた。  茜流金的蹴は百発百中(ひゃっぱつひゃくちゅう)だ。パパは、前のめりになって動かなくなった。  ちょうど、前のめりになった姿勢が正座で礼をしているように見えたので、私は、パパの対面(たいめん)に行き正座になって礼をした。  ここで、茜流柔術組手演武が終了した。  パパは気を失っていた。ごめんねパパ。
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