守るべきもの

「テメェ、今日がなんの日か覚えてんのかゴルァッ？」

「す、すいません……もう少し待って下さい。次は必ず……必ずお返ししますから！」

慌てた俺は歯を食いしばりながらも、罵声を浴びせるソイツに対し必死に何度も土下座をする。

そんな俺の髪を掴み強引に顔を向かせながら
「すいませんで済んだら警察はいらないだろ？なぁ？その言葉、何回聞いたと思ってるんだよっ！」

今日で4回目。

俺だって早く返したい気持ちはある。
でも、どうしようもないのだから仕方なく謝る事しかできないんだよ。

「ちっ！これだからめんどくせぇー事は嫌いなんだよ。いいか？兄ちゃん、耳の穴かっぽじってよーく聞け」

俺の髪を乱暴に離すと言葉を続ける。

「俺も何度もテメェのとこに来る程ヒマじゃぁねぇんだよ？だからよぉ、いい加減マジ次で終わりにしてくんねぇかなぁ？」

首に手を添えコキコキ鳴らしながら遠くを見つめて言う。

「次は！次は必ずお返ししますから、どうか今回も見逃して下さい……お願いします……」

再度、土下座をする俺。

「次は必ず返してくれんだろうなぁ？次返せなかったらどうなるか分かってんだろ？兄ちゃんもガキじゃぁねぇしなぁ」

「は、はい！必ず残りのお金を返します！」
ソイツの目を見ながら真剣に伝える。

「ま、返せなかったとしても俺は痛くも痒くもねぇけどよぉ。俺のメンツに関わるから返してもらわねぇと困んだよ？」

そりゃそうだろ。
アンタは借金を回収するだけの下っ端だもんな。
そんな事、口が裂けても言えないけど。

「んじゃぁそう言う事だ。いいか？逃げんなよ？」

「は、はいっ！」

「ったく、返事だけは立派だよなぁ。あーめんどくせっ！またくっから、そん時までに残りの200万円用意しとけよ、カスがっ」

最後に俺に向かって「ペッ」と唾を吐くとソイツは帰って行った。

その姿を確認すると俺は玄関の鍵を掛けた。