守るべきもの

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俺の親父は俺が中学1年の時に死んだ。 いわゆる一般家庭というものに属していた筈だった。 親父は仕事人間だったのに、ある日を境に仕事を辞め酒に溺れた。 酒に酔うと、母親や俺達に手を挙げることも多かった。 俺は2つ下の妹を庇う事に必死で、母親はそんな俺達を守るのに必死。 まだ小学4年生だった俺には父親に立ち向かう力などなく守ってくれる母親を見守る事しか出来なかった。 「もう止めろよっ!」 母親に手を挙げる父親に泣きながら言った事が1度だけある。 「あんだとコラァ?!お前の育て方が悪ぃからこんな子供に育ってんだろうが!」 そう言うと父親は更に怒り出し母親を蹴り飛ばしていた。 「陽ちゃんを悪く言わないで!」 縮こまり怯えながらも母親は俺の味方をしてくれていた。 小さな俺はその時に理解したんだ。 『酔っている父親に反抗すると母親が苦しむだけ』と。 それからの俺は父親に何も言わなくなった。 俺が反抗すれば母親が酷い目に遭うから。 父親が仕事を辞めてから母親がお金を稼いでいた。 「陽ちゃん、生活をする上でお金がないとやっていけないからお母さん今日からお仕事しないといけないの。そうしないと美味しいご飯も食べられなくなっちゃうのよ?」 小さい頃に母親に言われた。 「お母さん頑張って!僕いい子にしてるから」 無垢な俺は1人で頑張る母親を応援した。 それからというもの母親は休む暇もなく働いていた。 その大切なお金を父親は酒に使っていた。 中学校に入ったある日。 学校に電話が入り担任の先生に「直ぐにお家に帰りなさい!」と慌てて言われた。 言われた通りに家に帰ると仕事に行ったはずの母親が居て「病院に行くわよ!」と妹と一緒にタクシーで連れて行かれた。 市立病院に着くと慌てたように「黒田です!」と伝える母親。 俺と妹は訳も分からず着いて行くだけ。 連れて行かれたのは病院の《霊安室》 白い布を顔に被され変わり果てた父親が寝ていた。 死因は肝硬変。 普段から浴びるように呑んでいたのだ。 限界を超えても自業自得だろ。
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