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両親となる里親と対面する日の、胸のあたりがぐるぐるとするような感情は今でも覚えている。
表情や言葉に、僕を傷付けるような何かが隠されてはいないか。未来が今よりも悪くならないよう、落とし穴がないか探るのに必死だったのかもしれない。
スッと差しのべられた手は大きく見えた。
うかがうように顔を上げると、大人なのにぎこちなく、緊張しているのが丸分かりの表情をしていて、思わず呆気にとられた。
「両親のどちらも男という事で、苦労をかけるかもしれない。けど、僕たちは皆が日々笑顔で生活を送れるよう努力したい。もし君が良ければ……僕たちと、家族を作っていきませんか」
そう言ってガチガチに緊張しつつも笑顔を向けようとする二人の表情を見て、僕の方がつられて笑ってしまったのだった。あまりに真っ直ぐで、不器用なその姿からは嫌な感じが全然しなかったから。
その瞬間、不安から力の入っていた肩がふっと軽くなる感じがした。
「よろしくお願いします」
手を握ると、控えめながらもしっかりと握り返される。
頼れる人が誰も居ない、という心細さより、彼らに頼ることのできる未来を選んだ。
そしてそれは、僕にとって安堵と幸せの始まりとなった。
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